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EMT986

Emt986 高校時代からの友人H 氏から、CDプレイヤーを買ったから聴きに来いとの電話があって、聴きに行って来た。
実はEMTの新しい CDプレイヤー986のことを知らなかった。スチューダーの730は何度か聴いた事が有る。その下に薄型ラックマウントタイプの CDプレイヤーがあって中身はルボックスと一緒だなんて話も昔聞いた事があった。
形と大きさを見て、てっきりあのラックマウント型スチューダーのEMT版かと思ってしまった。
まったくの新型で70万もすると聞いて驚いた。
最初はことさらいい音には聴こえずに、これで70万は高いなと思った。
エソテリックの高級機は一揃いで何百万もするけれど、聞いた途端に、どうだこれがハイエンドだという音がする。

それから色々なジャンルの色々なソースを試すうちに段々とその真価が分かって来た。

どんな種類のソースでも一切の破綻を見せない。目を剥くような鮮烈な音は出さないけれど、良く聞くと大事な音は残さず出ている。鮮烈な音を出さないのはレンジの狭いスピーカー、アルテック409の所為もあるのだろう。
CDに特有の薄っぺらで固い音も出さない。段々に感心し始めた。
一聴してわかる良い音ではないけれど、最後にはさすが70万と思うようになった。

コンシュマーユースのトップエンドとプロ機器とでは求められているものが随分違う事に気がついた。

今でも真空管好きはプロ用のアルテック1567等をプリアンプに使う。随分前にはクワドエイトと言っただろうか、やはりプロユースのミキサーをプリアンプに使うのも見た。(赤毛とソバカスだったかな?)けれど、RCAピンプラグによるアンバランス接続が常識のオーディオの世界ではスピーカーとピックアップを別にしてプロ機器を使うのは例外的だ。
それに当時プロ機器は決して安いものでは無かった。けれど今の日本で買って70万という事は多分向こうでの値段は30万円代、何百万もするコンシュマーユースに比べれば随分安い

去年買ったデジタルディバイダや塚原さんの所で使っていたミキサーもびっくりする程安い。(塚原さんの所ではグラフィックイコライザーを2段重ねてRIAAカーブを作っていた)
こうした機器も昔はプロのスタジオでもなければ見かける事は無かったけれど、今は音楽をやる人たちは皆自分の部屋にこうした機器を並べて使っているらしい。勿論何百万のCDプレイヤーにツチノコのようなケーブルを使わないと得られない世界もあるのだろう。けれど狭い世界の中だけで上を上を目指していると見落とす事も多いのではないか。すぐ隣に有りながら、トップエンドのオーディオ好きと音楽を自分で作る人たちはまるで別の世界に住んでいる。

CDトランスポートの他にDACだ、クロック何とかだ、一揃いで高級車の買える値段にも驚くけれど、ツチノコのようなケーブル一本何十万、という辺りから少しおかしいと思い始めていた。

昔、友人に連れられて沢登りに行った事があった。源頭あたりの深い霧の中で岩にへばり着いたまま、にっちもさっちも行かなくなって、身動きの取れなくなった時に、さーっと風が吹いて視界が晴れたら、5メーター脇をハイキングコースの様に整備された登山道が通っていた。何十万のケーブルを使わなくても山に登る方法は別に有るのかも知れない。

大変に真っ当なプロ機器を聴いて、トップエンドのオーディオ趣味の世界が極狭い袋小路に思えて来た。

2007-04-27 カテゴリー: AUDIO | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)

オイロダインのマルチアンプ化5

先週の土曜日は、塚原さんのお供で、所沢の白根さんの所に御邪魔して来ました。トランス、カートリッジから、抵抗、コンデンサーまで作ってしまう人で、知る人ぞ知るアンプ作りのカリスマだというお話を伺いました。( 館山のレストランにも、世界的に有名なカリスマがいらっしゃいますね。)
ステレオサウンドに載せたり、評論家先生たちに取り上げてもらおうと思えば、何十何百という数をあちこちに配る必要があります。雑誌にも宣伝を載せないとマスメディアに取り上げてはもらえません。
物作り以外に膨大なお金を掛けないと私たちの目には触れる事がありません。
雑誌にも載らない小さなアンプメーカーには、勿論単なる独りよがりも多いでしょう。
けれど、そういったスケールに載らない規模で、素晴らしい物が作られている可能性だってあるはずです。

日本の真空管好きの間では、5極管より3極管、ヒーターはDCよりAC、無帰還、等古い仕組みの方が音が良いとされています。
帰還を掛けると、数字は良くても精気の無い音になる事は私も経験があります。

ウーファーのFゼロ付近でインピーダンスがピークを作ります。この高い抵抗が逆起電力を起こすので、帰還を掛けると低音がでない。など、いろいろと面白いお話を伺いました。盛大にハムが出ていたのも信念に基づいての話だったのですね。

色々感心して、刺激を受けて帰ってきました。月曜日にはH氏にYOKOYAアンプを聴いてもらう約束です。
丸一日空いた日曜日に少しはマシな音にしようとマルチアンプに手を入れたら泥沼にはまってしまいました。
500Hzを境に上を上げるか、下を上げるかだけの話のはずですが、少しいじるとまるでバランスが変わってしまいます。
歪みの少ないシルキーでラッパの迫力の無い音も、ほんの一瞬のことでした。
どこか一つつまみを回すとまるで違う音になってしまいます。

H氏にはマルチアンプの惨状をみてもらった後、YOKOYAアンプでAXIOM80を聴いてもらいました。
アンプの実力も確かめてもらえました。
B&W805もつないで見ましたが、全く良い所がありませんでした。

マルチアンプの完成を待っていたのでは何時になるか判らない。
母の所に持って行く前に、YOKOYAアンプを聴いてもらおうと、今週は塚原さんと玉井さん古川さんに声をかけました。
結局バラバラの状態のオイロダインマルチアンプから聴いてもらいました。最初はサキソフォンコロッサスでハウリングを起こしたり、バランスの崩れた所を見てもらって面白がっていたのですが、デタラメな音を人様に聴いてもらうのに我慢が出来なくなりました。先週はそれなりに楽しめたAXIOM80とYOKOYAアンプの組み合わせも上手く鳴りません。最後につないだ805が今日は良い音でした。
マルチの泥沼は勿論、それ以外まで、何が音をそんなに良くしたり悪くしたりするのだか皆目見当がつかなくなりました。

2007-02-17 カテゴリー: AUDIO | 個別ページ | コメント (4) | トラックバック (0)

YOKOYAさんのアンプ17800円

Yokoya1_2 ここに越して来るまで何年か、事務所にも部屋にも、ステレオを並べる場所がなくて、部屋の隅に積み上げていました。
その中で小さな機械を選んで、CDと一緒に親の家にあずけました。
預けている間に母はCDを聴く習慣ができたようです。
機械は私が今の部屋に移った時に回収したのですが、ここの所、安いラジカセを買って来て自分のCDを聴いているようです。
折角、音楽を聴くのなら少しでも楽しく聴いて欲しい。
操作の簡単な、小さなシステムを組んでやりたいなどと考えていたら、ありました。
ボリュームとスイッチしか無い操作系、ヘッドフォン端子が付いているのも好都合、何より小さくてシンプルです。
ですから、ラジカセよりはマシな音であって欲しいぐらいの期待しかしていませんでした。
持って行く前にと、鳴らしてみてびっくり。
最初は値段と大きさに比べて驚きました。
一週間色々な機械に繋いで試して見ました。
値段に比べてといった評価を撤回します。
全ての点でとは申しませんが、私のシステムをしのぐ所があります。
例えれば、100Wだか200WのQUAD606よりは上です。
1.5Wですから割れるような大音量は無理ですが、良く通る音で家のどこにいても細かい音が良く聴こえます。いつもフルボリュームですが、歪みを感じません。

何台ものアンプ、沢山のコードとボリューム、マルチアンプシステムを組み上げたばかりの私をくさらせるのに、これほど有効なカウンターパンチは無いでしょう。

個人の趣味の範囲で毎回、使う石や出力も違うようです。
今回はたまたま1,5Wと大出力を望まなかった事が良かったのかも知れません。
いやいや、セパレートアンプはもっとずっと良い音かも知れません。
他のアンプの保証は出来ませんが、私のアンプは予想を遥かに上回る良い音でした。

YOKOYA


 

PS
CDからの出力を直接インプットしていたのだけれど、レコードの音が聴きたいとの
リクエストがH氏からあって、プリアンプを通した所、SN比は下がったけれど、少し平板だった音に厚みと躍動感が出て来ました。音量も1.5Wでまるで問題ない事が判明しました。プリを挟めるなら8Wなんてまるで要らないと思います。我が家のスピーカーはどれも能率が高い所為もありますが、B&W805も問題の無い音がでました。

Yokoya3_2

2007-02-01 カテゴリー: AUDIO | 個別ページ | コメント (6) | トラックバック (0)

オイロダインのマルチアンプ化4

300Bだのオイロダインだのも口プロレスで相手を黙らせる程には役に立つけれど、誰にでも最善の結果を約束してくれる訳でもない。

昔からの真空管好きであれば、昨今の猫も杓子も300Bといった様子は癪にさわる。
何も300Bだけが真空管じゃないと皆思っているのではないか。

それなのに使った事には幾つか言い訳が必要かも知れない。
何より300Bは手に入れやすいし使ったアンプの例も多い、身近な真空管なのだ。一度使ってからでないと悪口も言えない。
珍しくゆっくり出来た今年の正月、オイロダインを300Bアンプで遂にマルチアンプ化をした私のシステムは格段に良くなった所もあるけれど、私の思惑とは大きく違ってしまった所も沢山あった。

それにしても上手くは行かない物だなどと、考えながら正月の休みに日野オーディオに行って来た。
一人のお客さんがDA30のナス管を持って来ていた。安斉勝太郎氏のDA30,PX25コンパチアンプでオートグラフを鳴らしていた。
何年かに一度このお店ではとんでもない物が聴ける。
まだ、ウェスタンの他にはセトロンと岡谷しかなかった頃、300Bの聴き比べをしている所に居合わせた事がある。ウェスタン以外には感心しなかったのを覚えている。(セトロンと岡谷、今の中国製とどちらががマシだろう)その中ではダントツだったwe300Bより50の方がちょっと良いと思ったのもここだった。(RCAだったかNLだったか思い出せない)。
前には随分感心した事もある再生産した50による日野アンプも、まるで歯が立たない。PX25のドームよりナス、さらにDA30には文句の付けようが無い。
シュワルツコップとマリアカラスを何と表現したら良いのだろう、ほとほと困った、いや心底感心した。
レンジの狭い、雑音の多い古い音ではあったけれど、最新型では絶対に聴けない音楽が鳴っていた。

2007-01-28 カテゴリー: AUDIO | 個別ページ | コメント (6) | トラックバック (0)

オイロダインのマルチアンプ化3

Photo_20

*

オイロダイン

ナチスのニュルンベルグ党大会会場も、40万人収容のドイツスタジアムもシュペーアによる会場が有名です。でもそれだけではヒトラーがいくら拳を振り回しても、声は百人にも届かないでしょう。
拡声器、マイクとアンプとスピーカーが優れていなければナチスドイツも無かったかも知れない。
な〜んてね。
音響が国家の威信にどれだけ関わっていたのかという話をしたかったのですが、話が少し大げさになりました。

アメリカ映画の音響を支えたのがWEやRCAであれば、ドイツ映画の音響と言えばクラングフィルム。 ドイツでもシーメンスとAEGが共同出資した映画音響機器部門クラングフィルムが1928年にはオイロッパ(EUROPA)というスピーカーを作っています。その後アルテックのAシリーズと同じように劇場の規模に応じて色々なシステムが作られました。 数々の巨大なシステムもある中で、1938年頃には38センチコーンウーハーとホーンによる2ウェイの最小単位、オイロダインが作られます。(アルテックで言えばA7に当たる様な気がします) 強力な磁石が必要だった為に、当初フィールドコイルだったスピーカーも(要するに電磁石です。アンプ以外にも大きな電源が必要でした。)戦後強力なアルニコ磁石が手に入るようになって、1950年頃パーマネント化されます。1965年ごろまでクラングフィルムのブランドで売られました。日本でも売られるようになったのは1970年代に入って、シーメンスブランドになってからです。
私のオイロダインは、昔、渋谷ロフトにあったウェスタンサウンドインクで買いました。お店の土井さんによれば、1961年製で、当時ある新興宗教の教祖が世界で最高のステレオを用意しろと言い出してドイツから運ばれた物だそうです。 F2aPPのパワーアンプが3台、それを自由に組み合わせ出来る切り替え装置とプリアンプ、身の丈程の縦型ラックに納められたアンプシステムが組み合わせてありました。恐ろしく魅力的でしたが私には手も届きませんスピーカーだけ買いました。アンプシステムの方は横須賀の有名なお医者様の所で彼のオイロダインを鳴らしているようです。
何故、お金もないのにオイロダインを買ったりしたのか。当時百貨店の外商のお手伝いで少し大きな仕事が取れそうだったせいです。気が大きくなっていました。そこに百貨店の店員扱いの割引も考えようなどと言われてとんでもない勘違いをしてしまいました。その後お施主様の急病で話がすっ飛んだ後は本当に大変でした。
骨格のしっかりした、堂々、朗々、と言えば褒め言葉ですが、一方でゴリゴリの一本調子で、ワルツが行進曲になってしまうような所がありました。暫くしてネットワークからスピーカーユニットへの配線を当時出だしの6Nで繋いだ所スーっと静かな音になりました。コードだけでこれだけ変わるのだったら、あのネットワークを外せばどんな音を出すのだろう。 何年も考えていたのですが、安いチャンネルディバイダーを見つけて初めて手を着けました。

あのゴリゴリや大迫力は全てネットワークの歪みだったみたいです。刺激的な音を出さない、友人によればシルキーな音になりました。 音の質は格段に上がったとは思います。非常に反応の早い、歪みの少ない最新型のスピーカーのようです。けれど失った物も沢山ありました。 何故こんなに大きくて間抜けな年代物を使っているかと言えば、今時の最新型にはない音の芯と言うのでしょうか、ガッツというのでしょうか、何かゴリっとした物が欲しかったせいです。 サックスの出だしのブオっという音は古いホーン型のスピーカーでなければ得られないと思っていたのに、あれは単なる歪みだったのでしょうか。 ベースラインは格段にはっきりしました。外に広がる低音の余韻もずっとマシになりました。 けどな〜、ラッパがな〜、これじゃまるでドームツイーターだ。 何十年も私の機械ではSOMETHIN'ELSEが楽しく聞けた覚えがありませんでした。この半年程やっと楽しく聞けるようになったと思ったのに。マイルスのペットの後、キャノンボールアダレイが入って来る所が楽しみだったのに。   


PS
ここに書いた事はあちこちからの読みかじりです。私のオイロダインが本当に1961年製だとすれば、クラングフィルムブランドのはずですが、シーメンスとしか書いてありません。
かき集めた読みかじりのどこかにか、61年製という情報かどちらかに間違いがあるのでしょう。
パーマネントのアルニコよりはフィールド型が、円弧状に並べる為に鉄のフレームの後ろが狭い物よりは真四角なフレームが、グラスエポキシのホーンよりはアルミダイキャストが、
日本の好き者の中では古い物程偉いという不変の思い込みがあります。
そういう意味では、オイロダインの中ではあまり偉い方ではなさそうです。
でも、25センチ3発の奴をみると、俺の方が偉いななどと思ってしまう所が馬鹿だなと自分でも思います。

Photo_19

Hitler'sSupercity

2007-01-28 カテゴリー: AUDIO | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)

オイロダインのマルチアンプ化2

300B小史
1927年前後でしょうか、映画に音が付いたのは。
トーキーって奴ですね。高いお金を取る劇場のため、家庭用の電気蓄音機とは桁の違うお金がかけられました。
もうひとつ、ベルリンオリンピックの’民族の祭典’やハリウッドを見れば判ることですが、(ムッソリーニのチネチッタも)
当時の映画産業全体が国威発揚のための国家的事業だったのです。
共産国ではありませんから、私企業のかたちにはなっていました。
米国でその音響部門を担っていたのが、ウェスターンエレクトリック、WEと略します。

アメリカでは電話も公営ではありません。アメリカの電話を作って来たのがベル電話会社、後のアメリカ・テレフォンアンドテレグラムAT&Tです。その海外版がインターナショナル・テレフォンアンドテレグラムIT&T。CIAなどの海外工作員はここの肩書きをよく使います。AT&Tの音響通信機器製造部門がWE。その一部門があのベル研究所です。1876年にグラハムベルがベル研究所で音声の通話に成功した事が発端だとすれば話しの順序が逆かも知れません。真空管の話ばかりしていますがトランジスタの発明もベル研究所、特許はWEが持っていました。

当初、映画の為に使われたWE41・42・43と言った機械はとてつもなく大掛かりなものでした。管球王国の51号、WSIの土井さんによれば、映画のフィルムとは別のディスクを音源とする仕組みから、映画のフィルムに音源が仕込まれた光学式(サウンドトラック付き)に映画の音響が統一された頃、1933年にはWE300Aと言う真空管が開発されています。それを使ったWE86というアンプが1934年に出来ています。

この真空管のおかげで、それまでの大きなアンプを随分小さな仕掛けに出来るようになりました。
その後それ以前のWE42・46といったアンプにも使える様に改良されたWE300Bが1938年に出来ました。
ただ、ウェスターンのアンプも真空管も全て劇場にリースされて一般の市場に出ることがありませんでした。
極々一部の人の手に渡って、噂だけが極一部の人に広まりました。
個人のオーディオで使おうなんて思いもよらない事だったのかも知れません。
丁度その頃始まった戦争で、レーダーが実用化されて、その性能と信頼性から300Bは軍艦のレーダーに、レギュレータとして使われました。
軍用で使われるとなると人の命が掛かってきます。少しでも不具合があればどんどん取り替えます。
そのため軍艦が出航するときには小さな部屋一杯に真空管を詰めて出かけたようです。
その後そうした軍艦も時代につれて退役します。
レーダーだって新しくなるでしょう。軍にストックされた大量の300Bが少しづつ日本でも出回りだしたのが、
1970年代ではなかったかと思います。
売ってる場所も数も限られていました。お金さえ出せばいくらでも手に入るといった代物ではありません。
試そうと思っても、買おうと思っても、中々手に入りません。
噂が噂を呼んで、ほとんど神話になって行きました。
あらゆる真空管を知って最後に、特別のつてとお金の両方を持つ人のみが持つ事を許される、そんな真空管だったのです。ちょっとオーバーかな。

こうした古い真空管を有り難がるのは、日本のアマチュアだけの話だったのですが、
段々その影響が世界中に及び始めました。
当初、直熱三極管のシングルエンド信仰は日本固有の物でした。アメリカ辺りの真空管アンプはGT管を使ったハイパワー志向が多かったと思います。それが今では世界中にシングルエンドマニアがいて、6550を沢山並べたアンプは昔程多く無い気がします。 今まで見向きもしなかった古いST管に高い値段がつくと、直熱三極管の王様300Bは商売になると踏む人も出て来ます。90年代の中頃になって中国やロシアでも300Bを作り始めました。
本家のウェスターンでも再生産を始めました。
今や初めての真空管が300Bという人もざらにいます。(昔の人が聞いたら卒倒しかねません)
誰にでも、どこでも買える、一番身近な真空管になってしまいました。
再生産ではない昔のウェスターン300Bは今でも、もの凄く高価です。
もの凄く高い昔の球と、今の中国製が同じ音なら貧乏人も幸せですが、そうは問屋がおろしてくれません。

300b_1
We_att_1
ペアの内一本を割ってしまって一本しか残っていない再生産WE300B

2009年3月に管球王国の51号、WE86に関する記事を読んで加筆訂正をしました。

2007-01-07 カテゴリー: AUDIO | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)

オイロダインのマルチアンプ化1

世が世であれば、とんでもない御大尽にのみ許される、いや、お金は足りても道徳的に許されない、神をも恐れぬ大放蕩、といった所でしょうか。
オイロダインを300Bのマルチアンプで鳴らそうという話です。
中国製の300Bと18,800円のディバイダーがあって初めて出来る、今の世の中ならではの話だと思います。
ステレオで2WAYか3WAY、モノラルなら4WAYの組めるチャンネルディバイダーが定価で3万円ちょっと。
そのままでも驚異的に安いと思いました。
去年の連休、秋葉原の日野オーディオで一度開けた箱無し、説明書無しを18、800円で買って来ました。
300Bシングルのアンプが2ペア有ります。中古の中国製300Bも2ペア有ります。
一世代前のアクロテック、6Nの同軸二芯ケーブル20メートルをほとんど叩き売りに近い値段で見つけました。
アンプ側のRCAピンプラグを6個、ディバイダ側のキャノンプラグを6個買って来てこの正月休みにやっと手を着けました。

何せコードが沢山必要で、これを6Nの既製品で揃えたりしたら大変なお金が掛かります。もっとも一方がRCAピンでもう一方がキャノンプラグなんてコードはなかなか無いし、外側のシールドをイン側に落とそうとすると、ピンプラグに落とす物とキャノンプラグに落とす物とも作り分ける必要があります。それに、キャノンの接続には2番ホットと3番ホットがあってコードは自作せざるを得ません。安い6Nケーブルが見つかって本当に良かった。
昼過ぎに始めて夕方までコードの自作に半日掛かりました。

Photo_18 マルチアンプについて
人間の耳は、若ければ20Hzから20.000Hzまで聴こえるということになっています。 これを一つのスピーカーユニットで完全に再生は出来ません。 低音が得意なスピーカーユニット、高音が得意なスピーカーユニットを組み合わせて再生する事が多いわけです。 普通はアンプから出て来た信号をスピーカーの手前で低音の信号、高音の信号とに分けてスピーカーを鳴らします。 アンプリファイドされた大きな信号をコイルとコンデンサーによるクロスオーバーネットワークで振り分けるのは、 スピーカーユニットのインピーダンスが一定でないなどの理由があって、実はかなりの無理があります。 アンプリファイドされる前の小さな信号の時に仕分けをして、それぞれの信号をそれぞれのアンプで大きくする。 アンプとスピーカーの間には何も入れない方が理想に近い訳です。 ただ沢山のアンプが必要になって普通は選ばれる事のない方法です。
DVDには前方左右、二つの信号の他に、前方中央、後方左右、さらに低音の5+1の信号が含まれています。 最近はステレオ2チャンネルそれぞれの周波数帯域を分けて沢山のアンプを使うことより、5,1チャンネルを再生するためにアンプを沢山使うことをマルチアンプという事が多いようです。

2007-01-07 カテゴリー: AUDIO | 個別ページ | コメント (4) | トラックバック (0)

IKEDA

今では、信じられない事だけれど、オーディオブームの頃にはカートリッジも色々な所で聞き比べが出来た。
特に第一家庭電器は熱心で、そこいら中にあるお店で何十ものカートリッジを聞き比べさせてくれた。
MM型ではシュアー。MC型ではデンオンの評判が高かった。けれども私の好みではなかった。
世の中の評判と私の都合とは別の物だと良く判った。

フィディリティ・リサーチ(以後FRと表記)のMC型・FR-1Ⅲが一番のお気に入りだったのだが、高くて手が届かない。 二年程の月賦にしてもらって、毎月阿佐ヶ谷の第一家庭電器まで千円づつを届けに行った。 小僧相手に良くあんな商売をしてくれたものだ。 後はSPUとデッカがあれば良い事が判って来た。後続のFR-7も高かったのを随分無理をして買った。

トーンアームのFR-64Sは未だに捜している人が多い。アメリカのネットオークションでは大変な値段が付いている。
当時で6万か7万で売っていたFR-64Sも今作ると、20万以上掛かるそうだ。日本の工業を支えた下請け工場が仕事を海外に取られて、立ち行かない。日本での物作りが難しくなっているのだ。月に千本の単位だったのが今は年に十本二十本、単位の違いも大きい。一分の狂いも許されない精密なステンレスの旋盤加工を、この単位では、中国に頼むのは無理だろう。

当時FR-64Sには欲しくても手が届かなかった。FR-1やFR-7をRMG212に付けてSPUと換えながら聞いていた。私がFR-64Sの中古を手に入れたのはずっと後、CDが行き渡ってレコードやプレイヤーを皆が放り出した頃だ。 1970年だか71年のFR-54発売の時にはFR-64の設計も出来上がっていたのだそうだ。当時いきなりあんなに高いトーンアームを作っても売れなかったのだろう。まずFR54でトーンアームで音が変わることを判らせる必要があったのだと聞いた。

(形だけで言えば一つ前のFR-54の方が綺麗だ。もうひとつ、アルミかステンレスかが、FR64と64Sの違いだと言われるけれど、ラテラルバランサーの大きさが違う。ステンレス製の本体の重さに釣り合う為64Sのウェイトは大きすぎる、64の小さいウエイトの方がオリジナルのデザインに近いのではないか?64Sを愛用しているけれど私自身はFR64の方が格好がいいなと思っている。)

その後FRが倒産して、FRの社長が一人で作り始めたカートリッジがIKEDAだ。他にいくつもあるMC型のカートリッジのほとんどは、基本的にはSPUと同じ構造をしている。先に付いた針でカンチレバーの根元のコイルを動かす。IKEDAは宙に浮いたコイルそのものに針が付いている。だからカンチレバーづたいに伝わる機械信号より、ずっとダイレクトな電気信号がコイルで起きる。

最近、あるお店でフェーズテックとマイソニック、現行のとっても高いSPUの三機種の聞き比べをさせてもらった。(こんな機会は近頃ではまずない。)マイソニックからは今までに聞いた事もない新しい音がして大いに感心したけれど、バイオリンを聞くのが苦痛だった。機械としての性能の他に、楽器としての音楽性を求められるオーディオ製品は誰かが最後の音作りをせざるを得ない。好き嫌いの分かれる所だけれど、池田さんの音作りは少なくとも私には相性が良い。

彼の作ったものはデザインも美しい。外部のデザイナーなどは使わずに、全て彼が構造も形も仕上げも決めたそうだ。
SPU式のMCカートリッジを設計したり、それを実際に作ったりできるのは、ある年代の日本人達以外には数える程もいない。その限られた日本人の中でもまるで新しいMC型の発電方法を考えだして製品化するなんて事が出来るのは彼だけだ。 増して、単なる技術者には到底出来ない音楽的な音作りや、形のセンス、こんなにいくつもの才能がたった一人の人間の中に詰め込まれているのが不思議でならない。 (ただ、経営の才能はまるで無く。任せていた副社長に随分とでたらめをされて、最後に倒産を選んだのだけが彼の選択だったそうだ)

普通なら新しい素材を実験する人、新しい発電の構造を考える人、最後の音作りの調整をする人、製品の形を決めるデザイナー。材料の手配加工から下請け工場への指示。
何人もの人がかかわるはずの仕事が彼一人によってなされている。 彼らの世代が死んでしまったら、この内の一つでも出来る人はもういない。

i-podが売れまくっているこのご時世にカートリッジなんて御呼びでないのかも知れないけれど、世界中の誰にも真似の出来ない日本の技術(人も工場も)が風前の灯火となっているのも事実だ。

何年かしまってあったプレイヤーを持ち出して去年からいじっているのだけれど、中々思うように鳴ってくれない。
IKEDAのカートリッジも、あるレコードの女性ボーカルで必ず歪む。
そんな時にインターネットでIKEDAの連絡先を見つけた。

電話をしたら、IKEDAもFRも見てくれるというので、カートリッジとトーンアームをまとめて見てもらった。
IKEDAのカートリッジについては、レコードの方が悪い、歪まないようにも出来るけれど、折角のカートリッジを鈍感にするだけの話だ。
だったら、ほかの鈍感なカートリッジを使ってくれ、IKEDAを使う必要は無いと言われてしまった。
ただトーンアームは接点抵抗や配線でロスが増えている。オーバーホールをして線材も換えた方が良いとの話で、お願いしてきた。

暮れに出来上がったトーンアームをもらいに東大宮まで行って来た。
色々な面白い話を伺った。

海外ブランドの高いカートリッジも実は、こうした日本のオーディオブームを支えた人たちが作っていたりする。 池田さん自身は、何度かあった海外からのOEMの話は断ったそうだ。 けれど彼の廻りの人たちが作ったものを、あれもそう、これもそうと教えてくれた。
トーンアームについたラテラルバランスやインサイドフォースキャンセラも、色々ついている方が客が喜ぶのでつけた。
実は、ああいったツノをつけると振動を拾ってろくな事が無い、無くても構わない。
とか、トーンアームの感度が大事でシェルの上に薄い紙一枚置いたら動くのが良いアームだなんて誰かが言うものだから、
軸を通る線材を細くせざるを得なかった。おかげで音が悪くなったとも言っていた。

売る為には営業や評論家の言う事も聞かなければならない。
工場に在庫している線材を使わざるを得ないこともあった。
思い通りに出来ない事が山程あったのだそうだ。

接点や線材を換えてもらって、機械部分のオーバーホールをしてもらったトーンアームはすこぶる調子が良い。
歪みも小さくなって、ずっと音が大きくなった。
古くなった往年のトーンアームを使っている人は一度、彼らが元気なうちに見てもらった方が良いと思う。

Fr64s



全てのデザインは自分でやっているとの話しはIKEDAについての話しだったのかも知れない。FRの頃には瀬川冬樹氏もデザインをしていたという話しを別の所で聞いた。真偽の程は未確認。

FRのトーンアーム64Sは私がデザインしたと評論家の柳沢氏がステレオサウンド誌に書いていました。2018 3/5加筆

 

 

2007-01-05 カテゴリー: AUDIO | 個別ページ | コメント (4)

CORAL H-1

417h13
コーラルのH-1が帰って来た。
25センチのウーハーと900X900の平面バッフルに組み合わせていた。
最初は、4000Hzあたりで上がストンと落ちたウーハーにはハイカットを入れずに、H-1側にコンデンサーを入れて6dbローカットのみとしていた、色々試行錯誤をして最後は2500Hz18dbのクロスオーバーでネットワークを組んだ。
友人の所にあずけて、帰って来たのは20年ぶりだ。
ほこりと錆びでドロドロになっていた時はもう興味も湧かなかったけれど、分解して磨き直したら鳴らせてみたくなった。


417h11


30センチフルレンジのアルテックがある。多分構内拡声用でHifi用とは言えない。上も下もレンジは極く限られているだろう。
手持ちのコンデンサーを直列に入れてローカットとしただけのツイーターには丁度いい。
アルテックもかなりの能率のはずだけどまだツイーターの能率の方が勝っている。抵抗2本のTの字でアッテネーターを作るのもレベルを決めるのに何度か試行錯誤が必要でめんどうくさい。

 

417h12jpg


上を向けたらきつさが取れた。しばらくこれでいいや。形がおもしろい。これでもう少しホーンが大きければもっと面白い形なんだけど。

H-1自体に問題は無さそうだ。システムとすれば、当然問題だらけだ。
フルレンジとは言っても、ウーハー側の上がどこまで伸びているのか分からない。ツイーター自体の周波数特性やインピーダンスカーブが分からなければこのコンデンサーでどんなローカットに成っているのかも分からない。増して二つを組み合わせたシステムの周波数特性なんて想像もつかない。
色々なソースをかけてみても、あちこちで破綻をきたしている。周波数特性はデタラメだろう、低域が出ていないのも明らかだ。
けれど、ピアノがいい。今まで私の機械ではどれで鳴らしても、上手く聞けなかったシューベルトの鱒が初めて楽しく聞けた。

低域を何とかしようとスーパーウーハーを足して見た。最低域を持ち上げても、もっとずっと上で落ち始めているらしい。
ボッケリーニのどれを聞いてもとても綺麗で、あの暗くておどろおどろしい所がなくなってしまう。
大きな穴が出来ているのは100Hzから上ぐらいだろうか、こんなフィルターひとつでボッケリーニがとても綺麗で普通の音楽に聴こえるのがおかしい。

PS
本来、H-1には脚が付いていたはずでどなたか脚が余っていたら譲ってほしい。

2006-11-03 カテゴリー: AUDIO | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)

インターナショナルオーディオショウ

Bw_1


10/21、土曜日の東京フォーラム、夕方駆け込んで見て来たけれど、半分も回れなかった。
どこの部屋も良い音ではあるのだけれど、欲しくなったり、音楽が楽しかったりすることはあまり無い。
音場再現にすぐれた現代の優秀機ほど、楽器の音色が魅力的でないことが多い。

他のあらゆる項目で落第しても弦の魅力に限ればAXIOM80に敵うものは無い、なんて自惚れていたのだけれど、
ソナスファーベルは最先端の性能と弦の音色が両立していた。恐ろしく魅力的な音だった。
二つ聴いてどちらにも感心していたのだけれど、片方はベーゼンドルファーという別のスピーカーだった。

マランツでは日本マランツ自社製のアンプで最新のB&Wモニターを聴かせてくれた。
ダイナミックレンジの広さ、SN比の高さ、音の立ち上がりのスピード、どれをとっても原音にあと一歩とせまるとんでもない音だ。
随分前にノーチラス801を初めて聴いた時程凄いとは思わなかった。より自然になったのかも知れない。
とんでもない音なんだけれど、音楽が楽しいとは限らない。他所のアンプを使えば、もっと上の世界が見えて来る気もする。

音は聴かせてもらえなかったけれど、B&Wの新しいアニバーサリーモデルが置いてあった。この写真が本邦初公開とは言えないけれど、まだ見た人は極く少ないはずだ。

線材を銀に換えたアニバーサリーモデルSS25は、元のマトリクス805に比べて音の艶が増していた。
こいつはどんな音だろう。
ケネスグランジのデザインも悪くない。何より大きさが好ましい。
部屋の中に何組ものスピーカーが並ぶ現状に満足している訳ではない。
このくらいの大きさのスピーカー一組に絞れれば部屋の中も大分すっきりするのにな。

2006-10-24 カテゴリー: AUDIO | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)

onlifeU22


Onlife_u22_front
Onlifeu22_panel
Onlifeu22rear

ずっと昔、オーディオフェアを五反田や晴海でやっていた頃は、家電各社も熱心で国産輸入合わせて大変な数のブースが並んでいた。けれど、ああいった会場でキチンと音を聞かせるのは中々難しい。隣より大きな音や綺麗な御姉さんといった方向に努力が向きがちだった。
あんなに憧れていたJBLにも、4343の重いコーン紙で愛想がつきたのもこの頃だ。
アンプの出力を大きく出来なかった頃は、軽くて大きなコーン紙で能率の良いスピーカーが必要だった。
ただ、そうすると低域のレンジを伸ばすのに大きな箱が必要だった。
ちょうどトランジスタアンプの出力が上がって来たのを良い事に、小さな箱でも低域がでるようにコーン紙はどんどん重くなって行った。
大きな出力で能率の低いスピーカーを鳴らしても、小さな出力で能率の良いスピーカーを鳴らしても、同じ音ならば、箱が小さくなるだけハイパワーアンプが有利だ。
でも、得るものがあれば、失うものも必ずある。
数字の上では素晴らしい特性の組み合わせも、スピーカーの能率が下がるのに比例して反応の悪い、伸びやかさに欠けるものになった。
勿論、失うものがあるからと新しい技術を否定していては進歩は望めない。
ただ当時は、毎年色々な新製品が山のように並んだけれど、いつもオンライフの真空管アンプで鳴らすクリプシュのラ・スカラが一番良い音だった。

当時の憧れもあるけれど、今見てもデザインが好きだ。フロントパネルのレイアウトにはマランツ#7の影響が大きい。メーターが光るのも、日本人は大好きだ。ただアルミのヘアラインシルバーか黒がお約束だとすれば、白いパネルは珍しい。(GASのテドラも白かった、どちらもその後黒くなってしまったのは営業側からの圧力だろうか?)
見た目以上に感心するのはその匡体の構成だ。ただの黒い箱にしか見えないけれど、フロントパネルを手前に倒すことが出来る。
つまみの裏のセレクタやボリューム廻りは一度配線してしまうと後から直すのは非常に困難だ、けれどこうやって倒れれば、接触や断線のチェックも、ハンダ付けも簡単に手が届く。
アンプとイコライザも基盤ごと抜き差し出来る。アンプ作りやメンテナンスに精通した人間の設計だと思う。
その後、多分ハンダごてなど握ったことも無い外部の’デザイナー’に頼んだのだろう、削り出し無垢のつまみの並んだ豪華な外観のものにモデルチェンジした。

うろ覚えではあるけれど、社長は都立大かどこかの先生で富成さんと仰った。
御本人は亡くなったけれど、カートリッジとトーンアームはいまだに評価が高い。
私と同じぐらいの息子さんが二人いて、二人とも旧いオートバイが好きで、お兄さんはイギリスで模型飛行機のキットを作っている、バイカーズステーション誌に載っていた英国通信は私もとても楽しみにしていた。
弟さんはやはり岩本町のあたりで旧いバイクの修理を教える学校をやっている。筑波の旧車レースなどでも良く見かけた。

オンライフという名前とダイナベクターという名前があってどちらが商品名でどちらが会社名なんだか良く区別がつかない。

アレックスモールトンもやっていると言えばお分かりになる人も何人かいると思う。

2006-01-07 カテゴリー: AUDIO | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)

是枝式300BS

Koreeda300bs
今まで使っていたのは、初段が五極管の310Aで、出力段が300Bのシングルアンプ。we91にも似ているけれど P-K NFBを掛けてはいない無帰還だから、we91式とは言いかねる。これでもQUAD606よりは大分ましだった。
やっと奥から真空管が出て来たので、とっておきの是枝式300BSアンプをつないで見た。
出力管は同じ中国製の300B、整流管は間に合わせで手持ちの5R4GYで鳴らした。
サックスなどの元気は良いのだけれど一本調子になりがちだったオイロダインから、細かなニュアンスが出始めた。
中国製の300Bが出てからはそこいら中にある300Bシングルのアンプとはレベルが違う。
同じ300Bを使っても完成度に大分差がある。
完全な自作や雑誌の製作記事のコピーでは、是枝式に迫るのはかなり難しそうだ。
今日は秋葉原まで行ったので、整流管を本来指定の5U4GBにしてやろうと思う。
ロシア製のEH(エレクトロハーモニクス)が1300円、CVと英国ナンバーの付いたシルバニアが2800円、レイセオン製が3300円、軍需産業レイセオンのミサイルをテレビで見たばかりなものだから、民生用に比べて軍用はどんなに凄いかなんて思い出したら、欲しくなってしまった。30分も悩んだけれど貧乏人はロシア製が分相応と諦めた。
帰って5U4GBを差すとB電圧が少し上がった。音は元気が良くなったけれど、少しうるさい。
昔、we43aを使っていた時に、AC100Vをパワートランスの120Vタップに繋いでいた。本来の100Vタップにつなぐと元気は良いのだけれど少し重心が上がってうるさかった。あの時に似ている。
どうしたものかと思ったけれど、ペアの内一本しか残っていない本家ウェスタンの300Bを差すと、元気が良いまま、ビシャッとうるさいのが収まった。大したものだ。
モノラルばかりなら良いのだがステレオのソースの方が遥かに多い。あぁもう一本ウェスタンの300Bが欲しい。97年か98年から2000年過ぎまでの頃の再生産モノを一本お持ちの方がいたら譲って欲しい。


After300b

PS
暫く使っている内に、300Bの使い始めに特徴的だと言われる青い光が頂部のアール部分から側面に移って来た。

2005-12-28 カテゴリー: AUDIO | 個別ページ | コメント (2) | トラックバック (0)

H氏のシステム

Nagoyasystem
御自身の東京での開業に備えて2年程、名古屋で勉強されていたH氏が来年早々に帰ってくる。彼のリスニングルームはおよそ30帖、ほぼ三間半X四間半の広さがある。東京では得難い環境に恵まれている。2年の仮住まいの間に彼が仕上げたシステムを是非見ておきたかった。半分は骨董趣味に近い私のシステムと最新の技術の盛り込まれた彼のシステムとは対照的だ。大きく違うのはその値段だ、でも一番違うのは音の向上に向けられたまじめな努力の積み重ねだ。本来は会話も成り立たない別の世界の話なのかも知れない。オーディオ以外にも色々共通の話題を見つけておつき合い頂いて感謝している。


Nagoyasp
スピーカーは彼自身による自作で、ここ10年程の新しい技術が色々と組み込まれたものだ。輪切りにした材料を貼り合わせて中に金属の軸をを通してある。膨大な手間の固まりだ。


Nagoyaniro
 中道を御存知だろうか。NIROはあの中道の社長が自らの好きな事をするために中道の会社を売り払って始めた会社だ。オーディオのアンプに関して全ての妥協を排してやりたいだけ、技術の限りを尽くして作られたのがこのアンプだ’エンジン’という名前には普通のアンプとは桁の違うという自負が込められている。
  
 スピーカーのネットワークは御影石とコーリアンで徹底的に制振されて、ひとつひとつのコンデンサーを銅で巻いてシールドがしてあった。
ただお金の掛っッたシステムは他にも沢山あるけれど。高いアンプやケーブルをとっかえひっかえする以外にこうした努力と手間のかかったシステムはそうざらには無いだろう。

 帰って来てから、やっと繋いだ自分の機械は余りに違う音で随分落胆をした。比べる方が悪いのは分かっているのだけれど。

2005-12-10 カテゴリー: AUDIO | 個別ページ | コメント (4) | トラックバック (0)

QUAD33

QUAD33オーディオマニアというのは馬鹿なので、狭い日本の部屋の中に業務用のスピーカーを持ち込んだり、大きな機械を積み上げて部屋を一杯にして、挙げ句の果てに床中に配線をのたうち回らせて何も不具合を感じない。シャネルやグッチを欲しがる馬鹿女と同じ様にJBLやタンノイの名前に憧れている。近所や家族から迷惑がられているせいか、絶滅も間近いのだが、誰も保護を訴える人はいない。 馬鹿でないオーディオ、つまり普通の暮らしに迷惑でない例は非常に少ない。

普通の暮らしの中でAudioを考えようとする時、QUADと言う会社の考え方が際立って来る。QUAD33を取り上げたいのだけれど、本当は古い管球式のQUAD22の方が音が良い。古いQUAD22と、QUADⅡでAXIOM80や、アルテックを鳴らすとこの50年の進歩って一体何だったのかと思う。 更に凄いのはモノラルの2がステレオの22になって中身が倍になったはずなのに、全く大きさも形も変わらなかった事だ。つまり機械と人間のインターフェースとして部屋の中に置かれるのに、最適な大きさを既に決めていた。中の機械の都合で決めた訳ではない、ということにはならないか。 (必ずしもコンシュマーユースとは限らずに、BBCなどで使われる事もあったようだ。モノラル時代に決まった場所にそのまま置ける事が要求されたのかも知れない) トランジスタ化された33もほとんど大きさに変化はない。部屋の中で良い音楽を聞くために、機械はこれ以上大きな顔をすることが許されなかった。一方、小さければ小さい程良いとも限らない、絶妙な縦横高さというものがあるのが良く分かる。 すぐに、ワンダフルとかグレートを使いたがり、(最近は、アメイジングとかオウサムなどと言う事が多い気がする)言葉のインフレに走りがちな、かの国や、猫の額ほどの家に住みながらベンツ・フェラーリに乗りたがり、こたつでコンビニの弁当を食べながらヴィトンを欲しがるこの国は、プロポーションに関する感覚が壊れている。’分相応’や’足るを知る’といった言葉も今はむなしい。 その国ではラブリーやプリティグッドといった言葉をよく使う。ブリティッシュアンダーステートメントという言葉もあるらしい。人の暮らしの中、機械が部屋の中でどれだけの大きさであるべきか、どういった質感であるべきか、どうしたら愛されるのか、そこを考えて作られている機械は本当に少ない。 色や質感に関しては管球式の22よりトランジスタの33の方が良いと思う。中のワイアリングと色分けもとても奇麗だ。只、パワーアンプに関して、303は好きだけれど、古いQUADⅡの美しさは別格だ。その絶妙な大きさと構成とプロポーションには敵わない。

2004-11-30 カテゴリー: AUDIO | 個別ページ | コメント (3)

DB-1

db1管球式のマランツ#7やマッキントッシュC22、クオード22といったプリアンプが今だに程度が良ければ何十万かの値段がつくのに比べて、70年代のトランジスタアンプで傑作扱いされるのは、マークレビンソンぐらいなものだ。音を比べればそれ以外に聞くべき物はないかもしれないが、デザインに関しては他にも見るべきものがある。薄型のアンプデザインなどもこの時代の成果だろう。ほかにも小さくてかわいらしいデザインがいくつかある。このDB-1の他にもAGIの511なんかは結構な数が出たはずだ。成功とは言えなかったけれどデイトンライトなども面白い格好だった。使わぬまま持っている人がいたら、譲ってほしい。

2004-11-30 カテゴリー: AUDIO | 個別ページ | コメント (10) | トラックバック (0)

Quintessence

Quintessence1948年からのLPレコードに対応したのが、マランツ、マッキントシュ、QUAD、リーク、フェアチャイルドといった真空管によるプリアンプの第一世代だ。その後LPレコードがステレオ化されると、これらのモノラルアンプを二段重ねにして対応したが、同じ物を二つ最初から一つの筐体にまとめた第二世代が幾つか出現した。この中にはマランツ#7やマッキントシュのC22と言った今でも評価の高い傑作が多い。
その後、トランジスタの発展とともに、電力消費と発熱が大きく、音が出るまで時間のかかる真空管は淘汰されていく。使い手の都合の他に、作る側からすれば重くて、大きくて、値段の高いトランスや耐圧の高いコンデンサーをやめて安く作りたいという理由もあったのだ。
70年代に入るとアメリカの若い技術者が小さなガレージメーカーを興してICを駆使したアンプを作り始めた。当時こうしたメーカーにはNASAの技術者が独立してといった枕詞が良く付いていた。中でも最大の成功はマークレビンソンだが、他にも消えてしまったガレージメーカーがいくつかあった。
今だに真空管アンプが音に関して高い評価を得ているのに比べると、当時のトランジスタアンプで今でも評価の高いものは極く少ない。
Quintessenceはアルミのヘアライン仕上げのパネルに円筒形のつまみ。ボキャブラリーはマランツ#7と変わらない。ただ少し間の抜けたというか、人を食ったレイアウトが今でもお気に入りだ。
音は大したことはないが、その後アンプ部分をジャンプして単なるセレクター・ボリュームとして使ったところチェロのエチュードよりも良かった。

PS正確に言えば円筒形のつまみの角が45度に削られているところが独特だ、後年チェロが真似している。

PS2すごいページを見つけた。クラクラした、スクロールして一番下を見て欲しい。LNP2は今でも中古で85万する。
マークレビンソン

2004-11-30 カテゴリー: AUDIO | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (1)

211ブースターアンプ

211booster
ラジオ技術誌12月号に新氏の211S一段のブースターアンプの制作記事が出ていた。暫く前に手持ちの211PPのブースターアンプを泣く泣く手放した私は、試聴会というか彼のレコードコンサートに行って音を聞いて見たかった。
整流方式の違いで大きく低音が違う実験もおもしろかったけれど、氏がSP盤からCDに焼き直したソースを色々聴かせてもらったのが興味深かった。1936年ベルリンオリンピックのファンファーレや、クライスラーのベートーベン・バイオリンソナタ、同じく1936年、山田耕筰指揮のベートーベン運命、それぞれの説明の中で電蓄時代に後の物とは違うけれどイコライザーを使っていたとの話があった。プリアンプの話に関して私の不勉強と記述の不備に気が付いた。前のプリアンプに関するエントリーは一度勉強しなおして、稿を改めたい

2004-11-27 カテゴリー: AUDIO | 個別ページ | コメント (0) | トラックバック (0)

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