高校時代からの友人H 氏から、CDプレイヤーを買ったから聴きに来いとの電話があって、聴きに行って来た。
実はEMTの新しい CDプレイヤー986のことを知らなかった。スチューダーの730は何度か聴いた事が有る。その下に薄型ラックマウントタイプの CDプレイヤーがあって中身はルボックスと一緒だなんて話も昔聞いた事があった。
形と大きさを見て、てっきりあのラックマウント型スチューダーのEMT版かと思ってしまった。
まったくの新型で70万もすると聞いて驚いた。
最初はことさらいい音には聴こえずに、これで70万は高いなと思った。
エソテリックの高級機は一揃いで何百万もするけれど、聞いた途端に、どうだこれがハイエンドだという音がする。
それから色々なジャンルの色々なソースを試すうちに段々とその真価が分かって来た。
どんな種類のソースでも一切の破綻を見せない。目を剥くような鮮烈な音は出さないけれど、良く聞くと大事な音は残さず出ている。鮮烈な音を出さないのはレンジの狭いスピーカー、アルテック409の所為もあるのだろう。
CDに特有の薄っぺらで固い音も出さない。段々に感心し始めた。
一聴してわかる良い音ではないけれど、最後にはさすが70万と思うようになった。
コンシュマーユースのトップエンドとプロ機器とでは求められているものが随分違う事に気がついた。
今でも真空管好きはプロ用のアルテック1567等をプリアンプに使う。随分前にはクワドエイトと言っただろうか、やはりプロユースのミキサーをプリアンプに使うのも見た。(赤毛とソバカスだったかな?)けれど、RCAピンプラグによるアンバランス接続が常識のオーディオの世界ではスピーカーとピックアップを別にしてプロ機器を使うのは例外的だ。
それに当時プロ機器は決して安いものでは無かった。けれど今の日本で買って70万という事は多分向こうでの値段は30万円代、何百万もするコンシュマーユースに比べれば随分安い
去年買ったデジタルディバイダや塚原さんの所で使っていたミキサーもびっくりする程安い。(塚原さんの所ではグラフィックイコライザーを2段重ねてRIAAカーブを作っていた)
こうした機器も昔はプロのスタジオでもなければ見かける事は無かったけれど、今は音楽をやる人たちは皆自分の部屋にこうした機器を並べて使っているらしい。勿論何百万のCDプレイヤーにツチノコのようなケーブルを使わないと得られない世界もあるのだろう。けれど狭い世界の中だけで上を上を目指していると見落とす事も多いのではないか。すぐ隣に有りながら、トップエンドのオーディオ好きと音楽を自分で作る人たちはまるで別の世界に住んでいる。
CDトランスポートの他にDACだ、クロック何とかだ、一揃いで高級車の買える値段にも驚くけれど、ツチノコのようなケーブル一本何十万、という辺りから少しおかしいと思い始めていた。
昔、友人に連れられて沢登りに行った事があった。源頭あたりの深い霧の中で岩にへばり着いたまま、にっちもさっちも行かなくなって、身動きの取れなくなった時に、さーっと風が吹いて視界が晴れたら、5メーター脇をハイキングコースの様に整備された登山道が通っていた。何十万のケーブルを使わなくても山に登る方法は別に有るのかも知れない。
大変に真っ当なプロ機器を聴いて、トップエンドのオーディオ趣味の世界が極狭い袋小路に思えて来た。
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