三渓園、ご存知でしたか?私は行った事がありませんでした。近所の大宮八幡わきの和田堀公園に毛が生えた程度だなんて(随分違っていました)誰かが言うので期待もしていませんでした。これが、あそこは凄いなんて聞かされて、期待なんぞをして行ったら幻滅していたのかも知れません。人間なんて勝手なものです。
幾つかの点で大変に感心しました。まず随分な広さがある事です。周囲の山の所為で外とは別の世界が出来ています。尾根を超えて向こうに煙突が見えたりするのは残念ですが、高層の建物も増える中あまり贅沢も言えません。広大な土地の無い日本では山を背にして遠景、手前に近景と重ねて行く事で視覚的な奥行きを稼いできました。長い参道の奥に神社やお寺の本堂を据えて、その背景に山や林を置いて視線を遮るのが日本的な景観の作り方です。神社の森もこのご時世ですから、維持が難しい。本殿の裏には別のビルの背面が見えたりでは有り難さも半減してしまいます。その点で手前のアプローチ、その裏には山の背景があって、夫々の建物の収まりが非常に良いと思います。明治村に行ったのは大学の一年の時、江戸東京たてもの園には、以前の武蔵野郷土館の時にしか行った事が無いのでうかつな事は言えませんが、移築された建物はどれも、景観を含めた周囲の状況から剥がされてしまった時点で、剥製に成ってしまった様な寂しさがあります。その点は同じですが周囲に余裕と自然のある三渓園の配置計画は恵まれたものだと思います。
広い敷地に好きな建物を集めてご満悦、こんなに凄い道楽を見た事がない。そんな事をフィリップ・ジョンソンの自宅に関して思いましたが、こちらの三渓園も単なるお庭というより広大な敷地を活かした建物コレクションなのだとは知りませんでした。スケールや趣味の善し悪しでも勝っているのではないでしょうか。関東で一番古い三重の塔だの、禅宗様の仏堂、白川郷の合掌造り、エトセトラ、全て移築して集めたというのですから凄いコレクションです。アメリカには行った事が無いので比べようも無いのですが。
こうした建物や庭園は維持管理が大変ですが、入園料をとる施設だけに手入れも公設の公園よりは良いみたいです。
出来た当時の写真を見ると山の木立も奥行きがなくて、浅はかなテーマパークにも成りかねない所でした。何十年かの歴史が景観にも厚みを足しています。景観や作庭によるテーマパークという意味では小石川後楽園にも通ずる所があると思いました。