kaorin27さんのアンプレストアを拝見している内に思い出しました。手放してしまったwe43aの内部に通じる所がありそうです。太さが6mmもあるような線は、綿か何かの表面の下にゴムだかコールタールだかの被服があってメッキより線を覆っていたような気がします。そうした太い線が直角に折れ曲がりながら宙を飛んでいる所が少し似ている様な気がしました。ただラグ板に付いたCR類やトランスはドイツ製の方が近代的に見えます。これは年代の違いでしょうか。
写真の真空管の下のでっぱった箱の中はすべてコンデンサーです。トーフより大きい奴がずらっと並んでいました。全体では巾が40〜50センチ高さは60センチほどの大きな箱ですが、ブースターアンプですから211PPの1段しか入っていません。4本並んだ211のうち2本は整流管です。
オイロダインを買った後、お店で聴かせてもらったのはwe41とwe42の組み合わせに十字の付いたショートホーンというか平面バッフルで4181,巨大なマルチセルラホーンとの組み合わせでした。ドライバーは555だったのか594だったのかわかりません。渋谷Loftの喧噪の中でフロアの端にいても聴き分けられます。だのにホーンに首を突っ込む様にして聴いても五月蝿くありません。音が通るってああ言う事でしょうか。手足が一本線だった頃のミッキーマウスをDVDで見せてもらいました。それまで意識した事も無かったのですが、単なる効果音一つにフルオーケストラが見える様でした。
映画のLDの中でテーブルの上にコップを置くシーンがあったのですが、テーブルの木の厚さやコップの重さまでが伝わって来ました。びっくりしました。
ずっと昔30年程も前でしょうか、ラジオ技術誌やMJ誌を読んでいる内に、マッキン・マランツじゃない世界があるらしい、一部の人達に取ってこの世で一番偉いのはウェスターンらしい事に気が付きます。。鳴らしているという喫茶店や専門店をいくつかのぞきましたが、思い切り角のまるまった、立ち上がりの遅い音でした。だからあれはノスタルジーの世界の問題なのだろうと馬鹿にしていました。
本気の本物を初めて聴いて驚きました。
買ったばかりのオイロダインを、どうしたらあんな風に鳴らせるだろうかと尋ねた所、41・42と揃えて行くのは大変だ。どんなアンプでも出口にこのブースターアンプを付ければ安くても似た効果があると薦められたのがwe43aでした。実際100w200wの石アンプの後に9wのwe43aを繋ぐと遥かにスケールと骨格が大きくなります。アンプの出力信仰を持った人には聴いてもらわないと信じてもらえないでしょうね。少し角が丸くなる所があります。ただ2〜3時間程鳴らして暖まるとスッと立ち上がりが良くなってそうした事を感じさせません。
いまは41・42・43などと揃えると、とんでもない値段の話になってしまいます。好きな人は昔からいましたが、猫も杓子もウェスターンなどと騒ぎ出したのは管球王国が出てからの話です。昔のステレオサウンドでは、ラックスと上杉以外の真空管アンプやリムドライブのターンテーブルは、実用以外の骨董であってまともな論評の対象でないとはっきり言ってました。それを全うしてくれれば、それはそれで一つの見識かも知れません。言い換えるとあの豪華な宣伝ページを真空管のガレージメーカーや骨董屋さんが埋める事など有り得ないという社会構造の問題だったのでしょう。オーディオ市場の縮小と供に今まで相手にもしなかったニッチな世界にまで進出するその節操の無さに少し抵抗がありました。MJ誌やラジオ技術誌に比べてその影響力の大きさが良く分かります。こんな事を言って良いのかどうか解りませんが、このAUDIOの世界には自分で作ったり試したりする事よりも、厚くて立派な本の綺麗なグラビアを眺めながら、いつかはタンノイなんて、ブランド信仰と神話の世界を彷徨う事が好きな人の方がずっと多いのでしょう。神話と迷信という意味では自作派にだって相当におかしな所があります。ブランド信仰でも迷信でも無いつもりでしたが、私も神話が嫌いとは言い切れません。
経済的な事情と置く場所の問題があって手放しました。今売れば大きな差額が手に入ったことでしょう。昨今の値段を聞く度、二度と私が手に入れる事もないかと思うと残念です。