大学の時に、デザイン科の友人が共通彫塑の課題で自分の足を彫っていた。
筋張ったり、くびれた所の一切無いコッペパンかブヨブヨの明太子のような作品を見て、内心こいつはとんでもなく下手なのかと思った。
後で彼の足を見せてもらって驚いた。まさに彼の彫った足と同じ形をしていた。
なんでこんな話を思い出したのかと言えば、子供の時には、ベラスケスの絵を見て、王女様は女の子というよりは小人のようで不自然だし、王様はあんなにあごの長いはずが無い。王子様の馬はビア樽みたいだと思った。もしかしてベラスケスって下手なんじゃないのとまで思っていた。
小さな頃は、展覧会に連れて行ってもらう度に、レンブラントやデューラー、ミケランジェロ、色々な画家に憧れた。特にドラクロアの展覧会を見た後は、暫く真似をして馬の絵ばかり描いていた。
さすがに、大きくなってからは、絵の楽しみ方にも幅が出て来る。
世界の歴史の中には多種多様な画家がいて、それぞれが興味深い。どれが一番などとは考えたこともなかった。
けれど、ここ10年程でひとつはっきりしてきた。好きな画家は山程いるけれど、誰になりたいかと問われれば、ベラスケスかマネになりたい。あんな絵を描けるようになりたいと思っていた。
プラド美術館展、平日の空いてそうな時間をねらって都美館まで行って来た。
じじいばばあだらけだ。世の中には真昼にこんな所に来られる暇人が私の他にもこんなにいるのか。
日本が平和で本当に良かった。
行ってみたら、お目当ての他にも興味深い絵が沢山あった。好きな名前ばかり追いかけていたら見逃していただろう。
ルーベンスには昔から、まるで興味が無かったのだけれど、実物を見ると、やはり一頭他を抜けた存在であることが良く分かった。
みんな同じ顔に見えるエルグレコの顔は、その前のティツィアーノに繋がっているようにも見えた。
勿論、あちらには良くある顔なのかも知れない。
ブーシェが今時のイラストのようで私好みだとは今まで気が付かなかった。
お目当てのエル プリモ。
穏やかだけど明晰で、全く派手な所など無い絵なのに、そこだけ画面が輝いているようだ、まったく素晴らしい。
あんな絵が描けたら、どんなに素敵だろう。
コメント