どれを見ても同じと言ったら悪口に聞こえるかもしれません。一枚づつに多少の好き嫌いはありますが、どれも安心して楽しめます。・・・なんて思いながら途中まで来て、一筆で描き切った水墨画の様な水彩を見て初めて気が付きました。あの微妙なトーンとフォルムが一筆で決められています。ペタクリペタクリ筆を捏ねた様な油絵のタッチを見てあの微妙なグレーの違いはカンバスの上で捏ねる様に決められて行くのだろうと勝手に考えていました。慌てて油彩を見直しました。どのグレーも下のカンバス地が見えていて薄塗りです。ペタクリはしていますが、色も形も一発で決めています。
襟や手首の繊細なレースがよく見ると一筆かふた筆の刷毛目で表現されていたりしてその超絶技巧に驚く事がありますが、モランディをそうした目で見た事はありませんでした。
カンバスの上で色や輪郭を捏ねた所が無いとは言いませんが、パレットの上一発で決めた色を使って、迷う事無くフォルムも一発で決めている所が多い。私はペタクリペタクリ何度もカンバスの上で試行錯誤しながら描いて行くのだと思っていました。何十年も勘違いをしていました。
ジョルジョ・モランディ―終わりなき変奏 東京ステーションギャラリーでで4月10日まで。
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