デレク・トラックスを最初に見たのは日比谷のブルース・フェスだったと思います。まだデレクトラックスバンドでした。客が喜べばオールマンナンバーもやるけれど、俺はデュアンのコピーギタリストじゃないとでも思っていたのでしょうか、オリジナルの曲やインプロビゼーションを長々と聴かされました。上手いのは良く分かりましたが、聴かされる方に嬉しいものではありませんでした。次に聴いたのは渋谷の公会堂で、結婚したスーザン・テデスキとのテデスキ・トラックス バンドになった後でした。とにかくバンドの全員が恐ろしく上手いのは良く分かりました。バンドの方向性がテデスキに任されたのでしょうか、その分デレクが楽になっている気がしました。
今度の来日は武道館です。花見客に重なって九段下から武道館までの歩道が身動きならないほどの混雑でした。武道館をいっぱいにする人気バンドになったのでしょうか。誰が来るのでしょう。白髪やハゲも混じるご同輩が多いかな、若い人も混ざっています。オールマン以来のファンと若いギターファンと2種類の客層に見えました。
バンドのまとまりが良くなりました。ホーンセクション3人の上手い事、楽器の音を重ねて厚い音を作るためでしょう、サックスとペット、トロンボーンが一部のズレもなく重なっていて、輪郭のにじみがありません。あまりに揃っていて楽器一つの音が聞こえません。サックスやトロンボーンソロの音を聴いてこんなに良い音がしていたのかと驚きます。そもそもトロンボーンってあんなに一音一音区切って正確に音が出せるものでしょうか。
テデスキのボーカルが桁違いに良くなりました。二人のボニー(ブラムレットとレイット)に負けません。緩めた時の余裕でまだ及ばない所がありますが、シャウトした時にはジャニスに迫るなどと言ったら褒めすぎでしょうか。
私も知っているカバー曲はどれも素晴らしかったのですが、オリジナルの曲は感心しません。そんなに上手くて君は何をやりたいのって辺りが弱点です。何年か前の上原ひろみにも同じ事を感じました。ダイアナ・クラールがカバーばかりだからダメだとか、小沢は交響曲を書かないからダメだなんて話は聞いたことがありません。上手い人が別人の書いた曲をやるのが悪い事には思えません。
デレクの様にギターばかり上手くなったり、テデスキの様にバークリーに行ってお勉強なんかしちゃうとヒット曲の様なゲスなものは書けなくなっちゃうのでしょうか。プレイヤーとして上手い事とソングライティングは別の事でしょうか。クラール、テデスキ、上原が揃って行ったバークリーは演奏の学校であってヒット曲作りの学校じゃないって事でしょうか。ここ百年世界をリードして来たアメリカのヒットソングって学校のお勉強で出来たものじゃない気がします。みんなが学校に行ったりするのはアメリカ音楽の危機ではないでしょうか。
オールマンが如何に名曲揃いかなんて思いました。
酷いことも言いましたが、折角のお勉強やテクを生かして今まで見た事もない音楽でギャフンと言わせて欲しいと思っています。一時期のウェザーリポートみたいなヒットを飛ばしてくれたら嬉しいなぁ。
本当にそうでしたね。全部カバーって言うのも面白いと思います。
デレクもオールマンの中ではお作法通りにやってましたが、
自分のバンドだと違う事やりたいんでしょうね〜〜。
投稿情報: 吉田 | 2016-04-03 21:17
いつか、デュアンとはまるで違うギターでギャフンと言わせて欲しいと思います。まだその気配は感じません。デュアンの真似はいつでもウェルカムです。
吉田さんのおかげで一度見たから、もう良いやじゃ済まないことがわかりました。バンドって良くなるんですね。今回は有難う御座いました。
投稿情報: kawa | 2016-04-03 22:32