子供の頃、家の前に時々プジョー204が停まっていました。ごく薄いグリーンの2ドアだったと思います。向いの池野さんのアパートに来ていたみたいです。当時、車を持っている人は少なくて車に乗っているだけで羨ましく思った物です。まして外車には今の何倍もの意味が有りました。だのに、家の前の204には何の関心も持ちませんでした。人一倍車に興味のあった私ですが、スポーツカーやレーシングカーばかりに目を奪われていました。外車と言うオーラも感じませんでした。小さくて、貧相な車でした。
使いやすい大きさで、一切自慢げな所が無い、それに今見るとピニンファリナのデザインは綺麗だし、前輪駆動に引っ張られるだけの後輪の情けなさがフランスっぽい。MINIや500、2CVが背負っている特別な記号性と無縁なのも好ましい。今考えるとまさしく私の理想その物にも思えます。何十年も経ってから急に思い出して、今更好きだなんて言い出してもどうしようもありませんけどね。
日産のブルーバードやZが活躍するより前のサファリラリーは、各ワークスが出来る限りの改造をして、信じられないようなスピードですっ飛んで行くと言うよりは、量産車が長い距離をそこそこのスピードで走ってタフネスを競うレースだったと思います。WRCにも含まれないローカルレースだった気もします。その頃良い成績を収めていたのはほとんどノーマルにしか見えないプジョー404でした。小林彰太郎によれば古いローバーをおばさんなどと呼ぶ様です。格好が良い訳でないとの意味も有るでしょう。同じ様に際立つ所の無い風采の上がらない車でした。決して偉そうな所が無くて、高い巡航速度で確実な仕事をする所が、今になってとっても素敵に思えて来ました。
勤めも辞めて、家も追い出された頃には、呆れる程の貧乏で四国での友人の結婚式にも行けませんでした。少しづつ仕事も増えて、このまま行けば人並みの稼ぎが出来るかもしれないと勘違いをした頃が有りました。どちらかと言えばバイクに傾いていて、車が欲しいと思う事は少なかったのですが、当時の505には興味が有りました。テニスの合宿に行く時、友人がその又友人の持っていた505に乗って来た事が有りました。ファブリックの内装と後席の乗り心地は予想を上回る物で大いに憧れました。やっぱりピニンファリナのデザインも好きでした。狭い街中で小回りが自慢と言うよりは、ロングツーリングでの快適に長所がある車だったと思います。
205が大好きな人に乗せてもらった事があります。どんなに素敵かを聞けば聞く程、興味が失せました。誰かがある車をどんなに好きかは他人にとってどうでも良い事なのだなと得心しました。このブログだけは勘弁して下さい。他所様を捕まえて無理に聞かせたりは二度としませんから。
204や505はその綺麗なボディに惹かれる所が大きいのですが、人間の好き嫌いが容姿の善し悪しだけに依らないのと同じ様に、不細工でも好き、変な所が大好きって事も起こり得る訳です。205には惹かれなかったのに、不細工な309には惹かれました。好きだと騒いでいた頃から暫くして、友人の309に乗せてもらいました。私の乗っていたRENAULT5TS(シュペールサンク)よりずっとしっかりしていて上のクラスの車でした。ゴルフと同じクラスだとは知りませんでした。
故障ばかりの5TSがもう駄目だと分かった頃、歳取った親からは、いざという時親を運べる4ドアで故障をしない車にしてくれと念を押されました。扱いやすい大きさで、目立つ事がなくて、4ドアで、306が丁度いいと思えました。人を驚かす所は無いけれどスタイリッシュな所も良いなと思いました。中古を捜して見ましたがどれも良い値段で手が届きませんでした。一回り大きいのに、人気が無くて値段の安いCitroenXantiaにしました。
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