こんな積もりじゃありませんでした。昼休み、ほんの暇つぶしのはずでした。たまたま手にした券を持って、あぁここかと土産物屋みたいな建物に入る時には困ったなと思いました。受付で案内された階段を上がる時には帰ろうかと思いました。べこべこした床を踏みながらデタラメな動線計画にうんざりしました。
ご存知でしたか?ついこの間まで綿が高級品だったこと。端切れ一つがお宝だったこと。ボロボロの麻布を重ねた半纏で藁の上に寝ていた事。圧倒的な貧しさの中でひたすらに家族を思いやる暮らしが有った事。そんな中でも思いやりや義務だけではない創る喜びと創意工夫が有ったこと。
贅沢とはまるで縁の無い中でも、女の子はおしゃれがしたかった事。ひたすらな思いで創った野良着の美しい事、浮かれていた自分の頭を思い切り揺すぶられた様に感じました。
近頃、こんなに心を動かされた事はありません。日本人がどうやって暮らして来たかを私たち日本人は忘れているのだと思いました。こうした暮らし全てを私個人が知っている訳ではありません。でも日本人と言った時には知らなかったと言うよりは忘れていたという言い方が正しい気がしました。
ボロや野良着に貧乏の話、どんなに心を動かされたかなどと言えば、ますます皆さんの足は遠のくのかも知れません。けれど見て欲しいのは物作りの凄さと見事さ、美しさです。家電のデザインや音楽、情けなくて日本の物造りに自信が持てなくなる時があります。北欧のデザインは素敵だわ。世界の民族衣装が素晴らしいなんて思った事もあります。でもこんなに凄いのは見た事が無い。浅草にお出かけの機会があったら騙されたと思って見て欲しいと思います。
浅草寺本堂の東脇、二天門前、アミューズミュージアム、ワークウェアを超えたアート展3月の30日まで。