新建築の別冊でしょうか、日産の本社特集が本屋に並んでいました。大傑作だとは思いませんが、他に許せない建物が沢山ある事を考えれば、ずっとましに思えました。(本を買っていません。ぱらっと見ただけです)人を驚かすような建物やもっと安い建物を追いかけて酷い結果になる事だってあったでしょう。銀行辺りに実績とやらを吹き込まれて、大設計事務所に頼めば、もっとつまらない建物にだってなったでしょう。谷口吉生設計監修で竹中の設計施工というのも良い選択だと思います。
日産に勤める友人に新しい建物は綺麗で良かったねとお世辞を言ったら、予想外の返事が返って来ました。各階事務室はかなりスパンの大きな無柱空間で、その中央あたりを人が大股で歩いたり、無造作に椅子に座ると、フロア全体が波打って揺れるそうです。各階の便所も足りないので混むそうです。
以前の銀座勤めが懐かしいという事も有って横浜の新社屋に厳しい所があるのかも知れません。
横断歩道や陸橋で下を車が通ると揺れを感じた事のある人は多いと思います。鉄骨の梁のサイズは重い物をどれだけ載せられるかで決まる訳では有りません。それだけであればもっと小さい梁で足りる事が多いでしょう。揺れを押さえる為に大きめの梁を使っています。だから揺れるからと言って明日建物が壊れる事は無いと友人には伝えました。
使う人の感覚と建築業界内でのチエックにはズレがありそうです。
恰好は良いけど安普請で5年か10年もしたらボロボロになりそうだ。ゼネコンや設計に騙されているのではとも言ってました。姉歯の事件以来、業界に対する不信が有るのは仕方が無い事です。
鉄筋を減らして、地震時に倒壊の恐れがある建物と、鉄骨の梁を小さくした事で揺れる建物、似た仕組みに思えるかも知れません。
広くて見栄えのするマンションが欲しい、人よりずっと安く買いたい,少しでも速く引っ越したいお客様。買ってもらう為には、玄関の石にお金を掛けても、来るかどうか分らない地震の為や、施工をチェックすべき設計監理にお金を掛けられないという判断に無理はありません。お客様御本人にはそんな積もりは無かったと思います。けれど何十年かに一度の地震さえ考えなければ、お客様の望み通りになったとは言えないでしょうか。鉄筋を入れるのにお金を寄越せ、きちんと構造設計するのに何ヶ月か遅れると言ったら買ってはくれなかったでしょう。そうしたお客を取り込む事に夢中で責任やモラルのかけらも無いデベロッパー。ゼネコンと設計はデベロッパーの圧力を受けやすい仕組みでした。・・・責任逃れに聞こえますね。
今回の仕組みは違うと思います。梁を小さくした分、誰かが得をした訳ではないでしょう。開放感のある空間、言ってみれば見た目の為に設計も施工もむしろ余計な手間とお金をを掛けた可能性だってあります。
私利私欲の為でなければ床が揺れて良いのか。業界内の勝手な理屈であって、どちらも迷惑だ。・・・・・・・ごもっともです。
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