レコード屋さんでは徐々にレコードが減って新しい音楽は皆CDになって行きました。新しい音楽に興味が無かった所為もあって好きなレコードを聴いていれば、新しいCDを買う必要が無いと思っていました。
新しい音源よりはむしろ、今まで私には手の出せなかった古い音源がCDでリイシューされる事が増えました。レコードでは手に入れ損ねた物が、CDでは容易に手に入る事も増えて来ました。
試しに買って見たCDプレイヤーは酷い音でした。大した手間も掛けず安物のCDプレイヤー一つを聴いてケチをつけても仕方が無かったとは思います。今まで散々手間とお金を掛けて来たレコードプレイヤーに比べての話です。CDプレイヤーと同じ値段でカートリッジまで付いて来るレコードプレイヤーに比べればマシだったのかも知れません。
レコードプレイヤーは、FR-1,FR-7,SPU等をRMG-212に付けていました。好きなカートリッジと真空管式のイコライザー、それにチェロのETUDEの組み合わせはそれなりに気に入っていました。
CDでしか聴けないソースの為に、折角レコードが上手く鳴る環境を壊そうとは思いませんでした。世間がCDに乗り換えてくれた御陰で、手の届かなかったトーンアームFR64Sも手に入れる事が出来ました。
けれど、ある事情で部屋でステレオを鳴らす訳にも行かなくなりました。機械は部屋の隅に積み上げました。その後一人で事務所を借りたのでやっとステレオを並べる事も出来る様になりました。ですが、レコードを持ち込んでしまうとさすがに仕事にならない気がしました。
あまり夢中にもならず音楽を流すのに、CDは好都合でした。けれどCDは硬くて細くて薄っぺらで逃げ出したくなる様な音でした。
最初に効果があったのはLUXのトランスをCDプレイヤーの後に入れることでした。新しいトランスだけあって音を丸めたり、レンジを狭くしたりする事が少なかったと思います。CDの細い所や冷たい音を補ってくれました。
一般に、分解能を求めると音は硬くなったり細くなったりする事が多かったと思います。その頃出て来た6Nのケーブルは分解能は良くなるのに音は柔らかくなる所が不思議でした。それまで使っていたPCOCCのケーブルは特に音が硬かったと思います。
チェロのETUDEは正確ではあるけれど、冷たい音で何かを許さない所がありました。使わなくなっていたQuintessenceのpriの内、増幅部分を飛ばしてセレクタとバランス、ボリュームだけを使ってみたら随分マシになりました。性能や音の善し悪しで言えばETUDEに敵うはずもありません。けれどシステム全体のバランスにはこちらの方が良かった訳です。
いくつかの試行錯誤でマシにはなりましたが、酷い音に変りはありません。困りはてて同じスピーカーAXIOM80が置いてある日野オーディオに自分のアンプを持ち込んで聴き比べをさせてもらいました。自分の事務所と同じ酷い音になるのを確かめてから、改善の手を捜しました。オヤジさんの提案で真空管のpri ampを入れたのが一番効きました。
いくつか比べた上でサンオーディオのpri ampキットを買いました。真空管の増幅段を入れたことで細い音が厚くなって、硬い音が柔らかくなりました。何より、音楽に躍動感が出て来ました。ほんの少し角が丸くなったりSN比が下がる事に比べて得た物の方が遥かに大きいと思いました。
CDを聴く様になって、増幅段を持ったpri ampが必要だと意見を替えました。
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