ワインなんて語るのもおこがましい事は良くわきまえている積もりです。何も知らない門外漢が口を挟むべきでない。
只、銘柄や地名、穫れた年を比べてのあれこれに本当に意味があるのでしょうか。品質監理の行き届いたトヨタの車や日本の家電を比べてのあれやこれやは分かります。けれど,ワインは全く同じ物を飲んでも開けた部屋の気温やグラスの形、開けてからの時間でまるで変ってしまいます。一緒に飲む人や料理まで変数の多さを考えると比較なんて成り立つものかしらとも思います。
出来たまま動かされた事の無いワインを試飲してひっくり返る程驚きました。大感激して半ダース買い込みました。海を渡って持ち帰ったワインを色々な状況で開けました。毎回違う味でしたが試飲した時の感激には二度と巡り会う事がありませんでした。どんなに立派なワインでも地球の裏側まで持って来て,まるで違う気候の中で飲む私達にあれやこれやを言う資格があるのでしょうか。
オイロダインについて言えばオリジナルのネットワークを使っている間、遂に 感心する様な音にたどり着けませんでした。ネットワークを外してディバイダーを使う様になってから、今までとは桁違いの可能性が垣間見える様にはなりました。けれど、沢山ある変数のどれかを少しいじっただけでまるで違う音になってしまいます。巷間言われるドイツの音、オイロダインの音とはどれを指すのでしょう。
アルテックは、A5・A7・604から、10センチの405・安い409まで共通する美質を持っています。多くの製品の中で大きさから値段、歴史まで一番身近で魅力的なポジションにいたのが755Eパンケーキです。随分色々な所で聴かせてもらいましたが、良いと思った事がありません。共通する魅力を持ったアルテックの中で755Eだけが異質に聞こえました。けれど、絶賛する人がいます。戯言と聞き流せれば良いのですが、755E以外についての記述には説得力
があります。
素材の素性を活かすのにはそれなりの環境が必要です。キチンとした条件を揃えて初めてその性質を明らかにしてくれるのでしょう。条件も揃わない中で良い結果が得られなかったとケチを付けても始まりません。組み合わせでまるで評価の変るオーディオシステムの中でも、個々の器具の持つ特質に触れる事があるのも事実です。もう何十年も作っていて、最近は線材を金にして銀にして銅にして、山の様にバリエーションのあるSPUにも、高価なヴィンテージから最近のものまで共通する美質があります。これは多くの人の知る所でしょう。千差万別の組み合わせを使いながら多くの人達が共通した認識を持っている。こうした認識が成り立つ例から振り返れば、私の場合ワインにも755Eにもオイロダインの本質にもまだ手が届いていないのでしょう。
AXIOM80の音色、ハーベスやスペンドールの魅力、LS3/5aの良さ、真空管の国柄とメーカー、製造時期の違い、三極管と多極管の違い、帰還の有無、巷間言われる何かに付いて私も実感した事はあります。世間の評判と一致するものかどうか分かりませんが、オイロダインと755Eの本質に未だ触れる事が無いのは本当に残念です。
その日飲んだワインが美味しければ結構です。ワインに関する世間の評価に通じようとは思っていません。
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