家にあるステレオセットなどとはまるで違う、オーディオという世界があるのを知ったのは、高校に入ってあちこち出歩ける様になってからでした。
JBLの4320、ALTECのA7、三菱の2S305、から出て来る音に驚嘆してから、もう何十年も経ちます。その間、新型スピーカーを聞く度にその進歩に感心して来ました。けれどあんなに感心したのに今となっては聞く事もないスピーカーが沢山あります。周りのスピーカーがどんどん良くなれば昔のA7なんか今時誰も使わないはずです。ところが、新しいスピーカーに感心してA7なんか忘れた頃に、聞いてみると全く見劣りしない。むしろ新しいスピーカーに無い魅力を感じるのは何故でしょう。(昔ジャズ喫茶などで沢山使われていたA7は必ずしもすべてが良い音で鳴っていた様にも思えません。むしろ感心する機会が増えている様にも思います。)
70年代まだ家電各社もオーディオに熱心だった頃、松下もテクニクスの名前で色々な研究をしていました。一番大きな成果はダイレクトドライブだと思います。そうした日本の研究もスピーカーではあまり成功しなかった様な気がします。数少ない例外、成功の例がテクニクスのリニアフェーズスピーカーだと思います。普通のスピーカーは平らなフロントバッフルに幾つかのスピーカーユニットを付けています。フロントバッフルから振動板やボイスコイルまでの距離はスピーカーユニットによりまちまちです。それぞれのユニットからの音には位相差が生まれます。リニアフェーズスピーカーは振動板の位置を揃えて位相差を無くそうと言う事だったと思います。
単一音源がスピーカーの理想だとすれば、604などの同軸スピーカーはその理想にも思えます。正面からは理想を叶えたかに見える同軸型も側面から見れば振動板の位置の不揃いを解決出来ていません。
A7の美点はウーファーにまでホーンが掛かっている事では無くて、ドライバーとウーファーの振動板の位置が揃っていることでしょう。単一音源と言った問題意識には一見無縁に見えるA7こそが単一音源の理想に近いとも言えます。
A5の発表が1945年、A7の発表は1954年だそうです。ウーファーにホーンを付ける事が目的だった。たまたまドライバーの振動板の近くになってしまったなんて可能性も無いとは言えませんが、テクニクスのリニアフェーズより大分古そうです。デビュー当時に意識していたかどうかは判りませんが,結果的にはA7が何十年も生き残って来た一つの原因ではないでしょうか。
811か511ホーンの絵があれば良かったのですが、これはホーンが変って、ドライバーもウーファーもフェライトになってからの絵です。かなり後で残念ではあります。けれどアルテックがA7で振動板の位置を意識していた事が判ると思います。
こんな事を言い出したのは自分のツィーターの位置を動かした所為です。前回、H氏の新しいマルチアンプシステムを聞いて拙システムとの低域の違いに驚きました。マルチチャンネルを始めてからずっと気になっていたのは低域です。ヘレンメリルやサキソフォンコロッサスではベースラインが判りにくく消えて無くなったり,突然大きくなったりします。これは低域に大きなディップやピークがある所為でしょう。あれこれ手を入れて大分マシになった積もりだったのですが、まだ問題が残っている事に気が付きました。
更に、手を換え品を換えして、ヘレンメリルではほとんど粗が見えない所まで持って来ました。サキソフォンコロッサスでも随分マシにはなりました。今度はH氏に拙システムを聞いてもらいました。
低域が良くなったのは認めてもらえました。でもツィーターが気になる様です。この所、低域の調整ばかりに気を取られていました。最初はツィーターのレベルをいじっていたのですが、まだ御気に召してもらえません。ツィーター位置を動かして見ようと提案がありました。
箱の上面でツィーターの位置を前後させると何かが変るのは判ります。ただボリウムのつまみを右にひねると音が大きくなると言った因果関係までは判りません。上面から更に奥まで押し込んで、ドライバーの振動板とツィーターの振動板の位置が近づくと、今まで気になっていた子音やサシスセソが気にならなくなります。高域のレベルは後退距離もあって落ちています。だのに色々な音の重なりが良く分かって,分離も良くなるみたいです。
少し高域のレベルを上げました。でも前よりずっと子音が引っこみました。
自分では気付かずにいた所を教えてもらいました。一人では上手く行かなかった実験も二人でやると良く判ります。Hさん有り難うございました。
まだ細かい微調整が必要です、もう少し追い込んでみます。
先日は楽しい時間を過ごさせていただき有難うございました。リニアフェーズからユニウェーブ(別府、高橋氏ら)にいたるまでの先人達のスキルは最近のメーカーでの2,3wayシステムのまとめ方に反映しているように思います。次はデッドマスの導入でしょうか?メカトロニクスで詰めたあとに、デジタルデバイダー(DEQX)の導入がおすすめです。楽しみはまだまだ続きますね。
投稿情報: hasegawa | 2009-04-27 03:08
偶然たどり着いてから毎日楽しみにさせていただいております。
初めまして。大阪在住です。
ギター・スリムの名曲をタイトルにされていてるなんて格好良いですね!
この泥臭い名曲、確かレイ・チャールズのプロデュースだった記憶が・・・
以前ALTECのA5を使っておりました。
振動板位置を揃えるのは間違いなくALTEC社の指定ですね。
マルチセルラ用の専用のホーン台も、ホーンの種類別に取付穴の位置が決まってました。
あと高低域のレベル調整だけである程度の音になる所が凄いラッパだと思います。
非常に興味あるテーマを取り上げられているので今後も楽しみです。
投稿情報: shunsuke | 2009-04-27 03:43
hasegawa様
あれからさらに4センチほど押し込んで、7〜8センチ上げました。もう少し押し込んだ方が良いのは解るのですが,それが1センチなのか2センチなのかは聴感上区別が付きませんでした。ドライバーとツィーターの外観からダイヤフラム位置と思しき所に揃えました。上げたのもツィーターホーンの仮想延長上にあんなに邪魔があって良いはずが無いという判断で、これも聴感上の差が解りませんでした。実際の音に差が出る様な実験を捜してみます。と言う訳でまだドンピシャでここと言ったポイントは見つけていません。
あれから色々なソースで確かめて見ましたが、今の状態でも格段の向上があったのは間違いの無い所です。有り難うございました。
shunsuke様
ようこそ,お越し下さいました。
アルテックが振動板位置を揃える事を意識している事実、成る可く古い資料で示したかったのですが、随分新しいものしか見つかりませんでした。実際に使っていた方のお話は説得力が違いますね。有り難うございました。
投稿情報: kawa | 2009-04-27 19:04
レスありがとうございます!
蛇足の余談なのですが・・・
1934年に開発がはじまったMGM社の「シャラーホーンシステム」は、(何故かWE社は製品化をしなかった)ベル研の「フレッチャーシステム」を借りてつくりあげられた装置らしく、その過程で、低音の音源と高音の音源との試聴位置までの時間差による「フレッチャーシステム」の問題が明らかになったとのこと。(タップダンスのレコードを再生するとエコーがついたように聴こえる等)
因みに、「シャラーホーンシステム」開発メンバーには、J.K.ヒリヤードやJ.B.ランシングなど、後にALTEC社で活躍する技術者がいました。
30年代中期以降には音源位置の問題ははっきりしていたんだなぁ〜と認識した次第です。
ただ、それ以前の時代のWE社の装置(カール・ホーン)セッティング・マニュアルをみても、決して「ポン置きでええねん」とは書かれていませが・・・
現在の私の装置は中域にWE555とカンノ22Aタイプ・カールホーンを使用しているですが、こんな位相管理を無視したようなホーンでも、ウーファーとの前後位置関係で音が激変します。
感覚的には、ホーン曲線が変わりる所(指定でフェルトが敷かれている所)辺りを基準にセッティングすると良い感じです。
あと、トゥイーターを置く位置がまた難儀で・・・
投稿情報: shunsuke | 2009-04-28 21:34
たった一つの富士山に、幾つもの登り口がある様に、振動板位置なども一つの登り口に過ぎないのでしょう。それ以前の登り口からだって頂きに届く道があるのだとは思います。WEのカールホーンやゴトウのストレートホーンはどうやって並べるんだろう。イヤー難しそうです。想像もつかない世界のお話、少しづつでも伺えれば幸いです。
投稿情報: kawa | 2009-04-29 02:49