Japan Blues &Soul Carnival。もう随分長い事、毎年のコンサートを楽しみにして来ました。
冠大会で頭に協賛会社の名前がついたり、フェスティバルだったりカーニバルだったり、会場が変ったり、Soulが入ったり、変遷を重ねては来たけれど、年に一度何組かをまとめてみられる素敵な催しでした。
去年は知らぬ間に過ぎてしまったけれど、今年は友人に声を掛けてもらって、日比谷の野音まで見に行く事が出来ました。雨の確率80%の中、直前に雨があがり、終わった後に降り出しました。
例年、呼んだ何組かの中にはあまり頂けないと思う人やバンドもあったけれど、トリの大物は必ず大乗りにしてくれました。
クラシックやジャズしか聞かない人にも、どうだこれがブルースだと胸を張りたい、聴かせたい、そう思う人が必ずいました。
一昨年のトリが誰だったか思い出せません。けれど今のシカゴブルースシーンを代表すると紹介されたエディテーラーの息子とキャリーベルの息子は期待した程ではありませんでした。悪くは無い、良い所だってあるけれど、クラシックファンに胸を張って自慢が出来るような、ジャズファンを驚かせるような代物ではありません。今年のトリは世界のブルースシーンを代表すると言って良いと思います。ロバートクレイでした。狭いブルースの社会の中、新しい世代で彼を超える人はいません。素敵な所だってあるはずです。けれどブルースに興味の無い人間の首根っこを捕まえてグルグル振り回してくれる様な力はありません。これが2009年現在の正しい状況認識なんだと思います。
毎年、オーティスラッシュやバディガイが来てくれる、とんでもない幸運を当たり前の様に感じていたのは大きな誤りでした。二人も70代、ラッシュの脳梗塞と同じ事が、いや命に問題が起きてもちっとも不思議ではありません。
明日ブルースミュージックが無くなる訳ではありません。けれどある芸能文化の形骸化、形は残っても一番大事な何かを失う瞬間に遭遇した様な気がします。聴き始めた高校生の頃、既に将来の無い音楽だと解っていました。奇跡的にその命脈を保って来たと言うべきでしょう。
日本で本当のブルースを聴ける様になって30数年、アメリカではどんどん本物が失われて来ました。けれどその30年が育てたものもある事に気付きました。シカゴで活躍する菊田、有吉。上手いなとは思っていましたが、今のシカゴに彼等より上手い人間が何人いるか。昔は日本で一番上手くても、アメリカでは町内の腕自慢にも敵わないのではないかとも思いました。シカゴの事情に通じている訳ではありませんが、菊田より上手いギタリストがシカゴに何十人もいる様には思えなくなってきました。
日本にいるバンドもかなり上手いけれどボーカルが弱いと思っていました。けれど大西ユカリはすごい、あれだけ声が出れば大したものです。ウシャコダも彼等なりのスタイルでボーカルの弱みなど見せませんでした。それにふたつのバンドの出来の良いこと。文句が無い訳ではないけれど、ロバートクレイバンドより良かったと思います。往時のシカゴブルースと言った大樹に比べれば極々小さな芽に過ぎないとは思います。明日には誰かに踏みつぶされたり腐ってしまうかも知れません。曲がって育つ可能性だってあります。巨大な芸能文化を日本が担って行けるはずもありません。でも小さな小さな期待が残りました。