今の若い人には分からない話かも知れないけれど、お酒を飲むという事すなわち、お店にウィスキーのボトルを入れて、薄い水割りを皆で分け合う事だった時代があった。
ある種の疑似通貨や権威の象徴でもあって、お歳暮に高いウィスキーを頂くことや、棚に置いてあるジョニーウォーカーに特別の意味があった。
高価だったウィスキーがそういった役割を果たしていた時代に、サントリーは言わば基軸通貨を持つアメリカのような立場にあった。
樽の並んだ工場や蒸留機、「何も足さない」なんてコピーで、すっかり本物だと勘違いしてしまったけれど、一部の高級品をはぶけば、サントリーのウィスキーの大部分はエチルアルコールにキャラメルで色を付けたものに過ぎない、と薬屋さんが言っていた。
(それをウィスキーに見せるのも大した技術だと思う。発泡酒や第三のビールなんてものもある。今だったらウィスキーの偽物を作らせたら世界一うまいと自慢が出来るかもしれない。 本物がこんなに安くなってはその意味もないか)
アメリカの映画を見ていると、金持ちとも思えない半分浮浪者のような登場者がなけなしのお金でカティーサークを買うのを見て、
日本での扱いと随分違うなとは思っていた。
皆がそんなウィスキーをすっかり飲まなくなって、久し振りにシングルモルトのスコッチなんかを飲むと美味しいのにびっくりしてしまう。
一方、他所の国のお酒、つまり文化の中で日本製をあれだけ有り難いものに仕立て上げた、サントリーの戦略には素晴らしいものがあったんだとも言える。
オールドの瓶のデザインなんて今考えても素晴らしい。日本独自の有り難さをでっち上げるのにあんなに上手な例は他に思いつかない。
日本人にウィスキーを飲ませる為に、最大の努力をしたのも、サントリーだけれど、日本人がウィスキーを飲まなくなった最大の理由もサントリーだろう。
功罪半場する功の部分、瓶やロゴのデザイン、広告、のほんの一部に過ぎないけれど、この灰皿も本当に上手だと思う。
サントリーとトリス二つ揃っているのが少し自慢だ。
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