小学校の時に年鑑で見た一文字ハンドルのマッハ1は本当に格好が良かった。けれど周りを走っているのは大アップハンドルの実用車ばかりで、ドカッティなんて、実物は見たことも無かった。
中学の時に雑誌で見た銀のフレーク塗装の450デスモには随分憧れた。次の年に黄色になってからは少しまとまった数が日本にも入ったようだ。
ラグビー部の先輩が結婚した折に、パーティで先輩の同級生がドカティ・シングル専門の店を始めるという話をしていた。
80年代の初頭だったと思う。その後お店はよく雑誌に載っていた。
けれど、発売から10年近く経っていたドカティを全部ばらして塗装・配線からやり直したりすれば、結構な値段になってしまう。
私にはとても手が届かなかったけれど、友人が、そのシルバーストーンというお店で一台組んでもらって乗り始めた。
暫く乗って、ガレージの一番奥に収まってからもう20年、ガレージを壊すので誰か引き取って欲しいという。
このままでは値段も付かないので、エンジンがかかる所までは私が手を掛けて、誰かしかるべき人を捜そうという事になった。
置く場所さえあれば自分で持っていたいのだけれど、そうも行かない。
頼み込んで、バイク仲間のガレージに暫く置かせてもらって少しづつ手を入れている。
完全に錆びてしまった所はしょうがないけれど、外装は大分奇麗になった。
70年代の日本車なら、放置してあった車でも、キャブを掃除して、ジェット類をきれいにして、ポイントを磨いてタイミングを調整すれば、なんとかなる。
6Vの電気系は発電より接点のロスや漏電の方が多くて中々言う事を聞いてくれない。
昔のままの電装で生きている車などほとんど無いと言われた。
キャブレターもジェット類をいくら綺麗にしても、ボディがつまったり、ダイアフラムがやられていて、まるごと高い新品にしないと駄目なことが多いそうだ。
バラして中を確かめたり、部品を捜してあちこちに電話すると、
大変な話ばかりで、だんだん気が重くなって来た。
私のyamahaTX650も74年型でちょうど同じ頃だ、素人の今思えば随分乱暴な手入れでもなんとか動いていてくれる。
ドカッティも同じように行くと思ったのは、大分甘かったようだ。
ヤマハの650やSRのエンジンも、国産のなかでは珍しく良い形だと思っていたのだけれど、これには敵わない。
オートバイのエンジンの美しさから言えば、ひとつの頂点だと思う。
PS
ちなみにデスモドローミックっていうのは、強制開閉式のバルブのことだ。
普通のエンジンはバルブスプリングに押し付けられて閉まっているバルブをカムやプッシュロッドで押して開ける仕組みだけれど、
デスモでは開けるのも閉めるのにもカムがふたつ付いている。
弁機構は複雑になるけれど、スプリングを押し開けるパワーロスが無い。