房総半島の真ん中あたり、千葉駅から茂原行きのバスに乗って、茂原の手前の山の中、長柄という所が母の田舎だ。
祖父も私の生まれた頃には勤めをやめて、長柄に戻って、週に一度監査をしていた会社に行く以外は、山の枝きりや下草刈り、薪割りをしていた。(山の畑に行く道の整備も、ご飯を炊くのも、風呂に入る為の熱源にも、山の手入れは欠かせないものだった。)
孫に甘い祖母と近所の子供たちに囲まれて,母の田舎は私にとって天国だった。
休みも中程になって口うるさい母が妹をつれてやって来ると、宿題はどうしただのと現実に連れ戻されるようで本当につらかった。
祖父の転勤転勤で連れ回された母はここで育った訳でもないし、千葉の山の中出身と言われるのがあまり嬉しくないらしい。
けれど私には特別大切な場所だ。
亡くなった祖父母のお墓までお彼岸に出かけてきた。もう二月も前の話になってしまった。
中村好文のas it isがそばらしい事は、直ぐにインターネットで調べられた。
それでも、東京の人間が地図だけを頼りに行くのは、ちょっと難しいかも知れない。
けれど、ちょっとばかり苦労して見つけた方が満足も大きいだろう。
何も知らずに、誰が設計したかも知らずにあの建物を見たら、それは大騒ぎをしたと思う。
感心する所が沢山あるのも、想定内。
小さな美術館の機能をまっとうしている御陰で展示物に興味が集中した。
(私が建物より、骨董・美術に興味が傾きがちな所為もあるとは思う。)
ここの主人は軒先で錆びたりしているモノを拾って来て、花一本差す事で皆をうならすようなセンスの持ち主らしい。
利休に通じる話にも思える。
それはそれで、大変感心したけれど、漢の馬一頭には敵わない。
あれが買えるんだったら、金持ちになりたいと思った。素晴らしい。
本来は日用品だったけれど、目利きが捜して来た逸品と、骨董というよりは美術品(新旧取り合わせて)と、
本当に素敵なモノに出会える希有な場所だと思う。
ちょっとしたドライブに最適な距離だし、是非お薦めしたい。
PS
床の松が皆一センチ程空いているのは何故だろう。
私も、松の足場板を随分使った。安くてしっかりした質感がお気に入りだ。
けれど、一年もしないうちに、空いて、割れて、反って、釘を引き抜いて大変な事になる。
何度か懲りてからは、突き付けにせず、両側に溝を掘って、雇い実を入れて、木ネジを脳天からバンバン打つようにしている。
それでも、割れたり、空いたりは避けられない。
ここの場合はどうだろう。足場板であれば、反って、割れて。空くだけでは済まないと思う。
見積もりを落とすのに、設計図には足場板を入れたけれど、大工がいやがってきちんとした松を製材させた。
痩せて空いてはきたけれど、暴れずに済んでいる。
設計者も値段のこともあって、まぁいいかと思っている。なんて所じゃないか。
勿論、意図的に隙間を作った可能性もある。けれどその目的が判らない。
長柄は千葉県でお付き合いさせていただいている林業家のところへゆくときにいつも通るところですね。
今度行くときに寄ってみたいと思います。
その前に場所をチェックしておこう。
松板に隙間、といえばF森教授の設計された、たしか赤瀬川源平宅の床が、もう最初から隙間を空けて漆喰を詰め込んでいたのを本で見ました。
どちらにしても、幅のあるものは、特に針葉樹だったりすると1センチくらいすいてきてもおかしくないかなという感じはあります。
投稿情報: fuRu | 2006-05-27 21:52
as it is自体は長柄から車で20〜30分程南に下った所です。ユートピア笠森までたどり着けば、後は場所探しもお楽しみの内だと思います。ただこのユートピア笠森、自治体の作ったお風呂か何からしいのですが、閉鎖されています。幹線道路からこの施設までの案内がいつまで残っているか心配です。
床の隙間は、まぁ何年かして落ち着いたら埋木してもいいのかなと思います。
でも、あの隙間が何かを意図しているとしたら?
昔だったら、落ちたゴミはどうするんだなんて思いましたけど、今だったらごみ取りロボットを一台床下に飼っておけば済んじゃうし。
投稿情報: kawa | 2006-05-28 12:07
今日、といっても日付が変わってしまって昨日ですが
行ってきました。
近々、記事にしてアップいたします。
床板は実も何もありませんでしたね。
床下が丸見えでした。
それでも梅雨時の今頃は、それほど隙間も空いていない。
でもゴミは落ちますよね。
床下がゴミ箱、という設定も面白そうかなと思って帰ってきました。
展示品は実にすばらしかったです。
投稿情報: fuRu | 2006-06-25 00:05
ぼくはついつい建物より並んだ品々に興味が行ってしまいましたが、
勿論、建物にも感じたことがありました。
古川さんの感想、エントリーを楽しみにしています。
投稿情報: kawa | 2006-06-25 22:22