一つの点音源から全ての帯域が再生されれば理想ですが、実際にはそれだけ広帯域のスピーカーユニットはありません。一つの音源を重視してフルレンジのユニットを選べば帯域には諦めが必要です。広帯域を実現するため2way3wayを組むと幾つか別の問題が出て来ます。SPユニットのインピーダンスには周波数による変化があってクロスオーバーには色々な問題が起きる事などには触れません。ここでは複数ユニットの位置の違いが定位や位相差に問題を起こす事を考えたいと思います。解決には二つ方法が有ります。一つは アルテックの604などの同軸スピーカーです。もう一つは同じくアルテックのA7やテクニクスのリニアフェーズの様に振動板の前後を揃える事で位相差を減らす方法です。同軸スピーカーで正面から見ての音源位置を一つにしても、ウーハーとドライバーの振動板位置にはズレがあって位相差が生じる事は前にも述べました。同軸で音源の位置を一つにして、更に振動板位置の前後を揃えてリニアフェーズを実現するのは難しい問題です(実現の例はありますけどね)。低域のコーンの手前にツイーターを置くだけではリニアフェーズになりませんが、拡声器の様な折り返しホーンにすれば出来ないでしょうか。折り返す事で高域振動板の仮想位置をコーン紙のボイスコイル位置に揃える事が出来ます。上に写真を上げたジェンセンがそこまでの意識を持っていたかは疑問ですが、これは面白い可能性だと思いました。
高校生の頃、初めてのスピーカーを選ぶ時、同軸とバックロードホーンはとても気になる問題でした。何かお得なものが無いと自身を納得させられない気がしました。何かの理屈でいい音がするんだと言う保証が欲しかったのかも知れません。今思うと情けない所が有ります。まだ川の手前の2階にあった日野オ−ディオや、お茶の水にあったオーディオユニオンの自作館で色々なユニット其々の魅力を聴き比べる様になって、同軸やバックロードホーンで何か得をしたいという気持ちが消えました。
同軸やバックロードホーン、リニアフェーズや平面スピーカーにESS、其々の問題解決へのトライを高く買います。けれど、スピーカーには色々な問題があって、その全てを解決する事は難しい、色々な問題のバランスを如何に取るかが大人の解決だと思います。一つの問題の解決だけに特化したスピーカーが成功するとは限りません。
正直に申しますと今でも、松下のゲンコツやローサーのPM4の様にコーンの真ん中に丸い物があると、訳も無く惹かれてしまう癖が有ります。
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