少しぐらいのハムは気にしない。信号の無い時ならともかく音が出始めれば気にならない、と自分自身には言いきかせます。それでも気にはなっていて、あちこち手を入れて来ました。ハムバランスやディバイダーのアッテネーターにも限りがあります。桁違いに能率の良いスピーカーをストレートに直熱三極管で鳴らせば、アンプの裏蓋をあけて残留ノイズを押さえ込むのにも、他に出来る事にも限りがあって、私にはここいらあたりまでかなと思い始めました。
パワーアンプ入り口のボリュームで絞れば良いのは解っています。けれど一番大事な500hzから8000hzまでをボリュームの付いていない是枝アンプに任せたい。アンプの入り口にボリュームを着けるか、スピーカーの前に入れるか。どちらにせよ慴動式のボリュームよりは固定抵抗でL型パッドを組んだ方が音には良い気がします。スピーカーユニットのインピーダンスが分らない場合でも、パーマネントの磁石ですからその範囲は無限ではありません。せいぜい4〜16オームの間でしょう。エイヤっで決めて、本当は少しぐらいズレていても音が出ない訳でもありません。 又、パワーアンプの前に入れる場合、抵抗値をどのくらいにすればいいでしょうか・・なんて悩んでいても始まりません。
手元には5wや10wのセメント抵抗が幾つかあります。ウーファーのインピーダンスはどこかに書いてあった5オーム、ホーンのドライバーは8オームだとしてしまいましょう。手持ちの抵抗でウーファーは6db、ホーンは10dbマイナスのアッテネーターが作れます。
能率の良いスピーカーを出力の小さな真空管で鳴らすのが自慢だったはずなのに、アンプからスピーカーユニットまでの間に何も入れないことがマルチアンプの利点だったはずなのに、角を矯めて牛を殺すなんて言葉まで連想されます。普通のスピーカーの複雑なネットワークに比べれば抵抗を挟むだけですから、ずっとマシだとは思います。けれど何でしょうこの罪悪感は、アンプのノイズを押さえ込めずハムを白状するのは恥ずかしいし、抵抗を挟むのは悔しいです。心理的な抵抗がこんなに大きいとは思いませんでした。
とにかく回路の中の部品を減らしたい、少なければ少ない程、短ければ短い程良い音のはずだ、トランスなんてとんでもない、スピーカーユニットのインピーダンスも特定出来ないまま入れる抵抗は如何なものか。こうした考えは子供じみた狭量でしかありません。システム全体のインピーダンスの問題や長い経路の中のどこでゲインを稼ぐかのやりくりが大人の解決だと頭では判っているつもりだったのですが、子供じみた非寛容が頭をもたげます。
下手に回路や部品を増やすよりは少しぐらいのハムなんて、音楽を聴くのにいちいち気にしないと思っていました。けれどノイズレベルが下がってSN比が良くなったら、初めて聞こえて来た音や気配があって、確かに効果はあるみたいです。子供の潔癖さに大人のやりくりが優った様です。いくらアンプのカタログでSN比を比べても、マルチなんて始めると、システム全体のSN比の肝は別の所にあります。今回もあくまで実験です。大分マシにはなりましたが、まだハムが消えた訳でもありません。途中ではありますが、もう後戻りは出来ません。
なんて思っていたらスピーカーユニットのインピーダンスが判りました。クラングフィルムのサイトの中に、マルチを始めてからははずしてある私の物と同じネットワークを見つけました。ホーンのドライバーは15オーム、ウーファーは4オームか7.5オームみたいです。それぞれ8オームと5オームを想定していた訳ですから、道理で思った程能率が落ちないはずです。又アッテネータを作り直さなきゃいけません。そう言えばプリアンプ用に用意した100Kオームの2連ボリュームがありました。固定抵抗を重ねた24段のラダータイプです。パワーアンプの前に入れて見ましょう。アンプの後ろで絞るか、どちらが良いのか試して見ましょう。