まだ、成田が無くて羽田を使っていた頃ですから、随分昔の話です。帰りのJALの中でおそばが出ました。ステーキがあってスパゲティがあってサラダがあって、テリーヌだかムースがあってケーキもありました。献立の盛りだくさんなことと言ったらありません。けれどひとつとして美味しい物はありません。 なぜかおそばもありました。隣に座っていたアメリカのおばさんは何も浸けないおそばをムシャムシャと食べ始めました。あわてて食べ方の説明をしようと思ったのですが、拙い英語を頭の中で確かめている内に食べ終わってしまいました。ゴクゴクと汁だけを飲み干して、顔色一つ変えません。美味しいものだったでしょうか。
システムキッチンの起源を確かめるという企画だったと思います。ドイツの古い集合住宅に残ったキッチンを見に柏木某が出かけて、その後見せてもらった御礼にそばを打つというテレビでした。御礼にそばを打つと言うのは日本ではしゃれた行為であって、賞賛こそされても非難を受ける筋合いではありません。けれど突然やって来た東洋人が作った不思議な物を食わされて、住人は明らかに困惑していました。
参宮橋に事務所があった頃、近所の中華料理屋と話をする様になりました。台湾から来た家族で奥さんが料理をして、旦那さんがホールで客の相手をしていました。かなり親しくなって正直な話もする様になってから彼が言う事には、日本に美味しいものは多いけれど、何にも味のしないそばのどこが美味しいのか分らない。生で物を食べたり、油もつけずに食べる日本料理が恐ろしく粗末な物にしか見えない事があるとも言ってました。
勿論私自身はそばが好きですけれど、一枚のざるに申し訳程度にしか載っていないそばに、高いお金を払って有り難がる事に抵抗があります。日本の、高級に成る程素材に近く、簡素なものになって行くというのはかなり不思議な価値観です。どこでも誰にでも通じる物とは思えません。ちょっとした事でそばの魅力とはぐれてしまう事もありそうです。
そんな私でも立ち食いの天ぷらそばには大きな関心があります。分相応ということでしょうか。素材の蕎麦そのものと立ち食いのテンプラ蕎麦の魅力は別の物かもしれません。初台駅前の加賀、神田駅ガード下の横断歩道を渡った向いの立ち食いあたりがお薦めです。
神田の立ち食いは、かめやでした。Akiさんに早速試食してもらった上、写真を送って頂きました。有り難うございます。かめやは神田駅の反対側、銀座、新宿のしょんべん横丁にもあります。
加賀は幡ヶ谷じゃなくて、初台でした.訂正します。
結構でございましたですよ。なんてったって「かき揚げそば」350-円でございますですよ。
投稿情報: AKi | 2010-02-27 03:33
取るに足らない物や、安物に対する偏愛に他の人を巻き込むのはお門違いかも知れません。お付き合い頂いて恐縮です。高いおそばが嫌いな訳じゃないのですが、立ち食いを旨いという人間なんか相手にしてくれないでしょうね。
投稿情報: kawa | 2010-02-27 16:34