フォーミュラ-1はドライバーのチャンピオンシップだけれど、もうひとつメーカーの為にマニファクチャラーズチャンピオンシップというレースがあった。
それはプロトタイプ(本来は原形とか試作車という意味だけれど、レースの世界では市販車とは別の、屋根付きでタイヤの覆われたレーサーをさす。)という車で争われていた。
60年代、ヨーロッパ中心だったレースに、巨大な資本と7リッターV8のバカ力を武器にフォードが進出した。醜いフォードマーク2と4リッターV12の素晴らしく美しいフェラーリP4が争っている頃、巨大な恐竜たちの足元を這い回る小さな哺乳類のように、隙あらば小さなクラスから入賞を狙っていたのがポルシェだった。
日本でも、プリンスや日産、トヨタといった巨大なメーカーに小さなプライベーターが一矢を報いんとして挑戦する時、選ばれるのは必ずポルシェだった。
レースでも小さなクラスから、次第に総合優勝を争うクラスになって、917がマニファクチャラーズもCAN-AMも常勝を誇るようになった頃、ポルシェに対する気持ちに変化が起きた。
市販車の世界でも、あくまでも極く少数の好きな人の買う車であって、有名人が金持ちになると買う車ではなかった。
車がひと各々の嗜好で選ばれたり、工学的な判断の対象である内はいいけれど、ある数を超えると、そうした範囲を超えて社会的な意味を帯びて来る。
ポルシェやベンツを買ったと言えばそれだけで単なる車の問題では済まない意味をしょって立つことになる。いくらおれのは356だといっても、分かってくれる人は少ないだろう。
小学生の頃、’フェルディナンドポルシェの伝記’や’フォルクスワーゲン世界を制す’を読んだり、輸入車ショウでミツワのパンフレットをもらったりのポルシェびいきだった私もポルシェにはほとんど興味をなくしてしまった。
ポルシェに何を期待するかは人によって違うのだろう。
成るべく簡単な空冷水平対抗を、リアかミッドシップに載せたスポーツカー。極端に言えばビートルの皮を剥いで新しい皮を被せただけで、こんなに楽しいスポーツカーが出来る。なんて所を期待する。(こんな期待は誰もしないか?)
356には、フェラーリや最近のポルシェのように技術の限りを尽くした最高の贅沢ではなく、スーパービートル、フォルクスワーゲンに毛の生えたスポーツカーであって欲しいと思うのは侮辱だろうか。
現在のポルシェ乗りの9割は侮辱だと思うのだろう。最高のスポーツカーを作ることこそがポルシェの素晴らしい目的ではあるのだけれど・・・
そういう意味では914が私にとって一番ポルシェらしいポルシェだったのかも知れない。
kawa さんがおっしゃるように FLAT4 を積んだ軽量簡単なスポーツカーという意味で 914 はすてきな選択(あの頃、スタイルが好みではありませんでしたが)でしたね。ポルシェのエンジンのと VW のとあり、VW のなら価格もそれなりだったという記憶があります。米国では最近まで結構レストアの対象だったようです。
BOXSTER に 914 的なものを期待していましたが、そういう訳ではなかった......のでありました。
投稿情報: AKi | 2005-09-09 21:32
私も出た頃はスタイルが好きではありませんでした。
何十年もしてから良いと思い始めました。
AKI様の御気に触るような事は書いていない積りですが、もし御気分を害するような部分があれば仰って下さい。
まずい部分があれば訂正したいと思います。
コメント有難うございます。
投稿情報: kawa | 2005-09-09 22:54
いえいえ、とんでもありません。
356 に私が期待したのは、kawa さん的なものとは違いましたが、VW のように乗れる車に仕立てたいと思っていたのですが、なにせ 6V、それが問題でありました。
投稿情報: AKi | 2005-09-09 23:42