レースでは直線の短い筑波サーキットと、直線の長い富士スピードウェイとではクルマのギア比から変えてしまいます。ギヤ比を変えたクルマは別のサーキットに持って行った途端に役立たずです。
S字コーナーの切り返しで大きくロールしてしまうノーマルサスペンションではアクセルを踏み込むのが遅れます。一瞬でも早く踏み込む為にサスペンションを固めてしまったレーサーの乗り心地は絶望的です。
エアクリーナーを外して空気量を増やせばメインジェットを上げられる、ほんの少しはパワーを稼げるかも知れません。でも冬になって空気が濃くなった途端に混合比は薄くなって、アクセルを戻す度パンパン言い出すでしょう。少しでもキャブをいじった事のある人なら、海でも山でも、夏でも冬でも、同じ様に走るノーマルキャブがどんなに良く出来ているかを知っています。
チューンナップというと性能を上げる事と思う人もいるでしょう。普段、私たちの廻りを走っているクルマがサーキットをとんでもないスピードで駈けて行くのを見れば性能が上がったと捉えることも出来そうです。けれど全ての性能が上がった訳ではありません。性能を上げるというより範囲を狭めていると言えるでしょう。狭い条件の為だけに調整調律をすれば、条件から外れた所では失う物も多いはずです。サーキットでのコンマ何秒かの為には不都合も増えるというお話です。
家電屋さんの作るオーディオ機器は、どんな使い方をされても事故を起こさぬ様、2重3重の保護回路が付いています。音の為にはなるべく短い回路で信号の通る素子を減らすこと、ストレートワイヤ ウィズ ゲインが理想だとすれば安全性と音の良さはトレードオフの関係と言えるかも知れません。
macで鳴らすiTunesは何の事故も起きぬ様、何重にも保護の掛かった仕組みです。どんな使い方をしても綻びを見せません。クルマで言えば厚い内装やエアコン、何重もの安全装置の付いたセダンです。重い図体ですから乗り心地は良くても、一瞬で身を翻してS字コーナーを抜けて行くという訳には行きません。
それでAudirvana Plusです。macとiTunesに新しいソフトを足す訳ですから通る所が増えそうなものですが、どうも逆の話みたいです。何重かの保護を外してバイパスをさせる仕組みらしいのです。普通のセダンからエアコンをはずして内装をはがして、かなりスパルタンなスポーツカーにする事が出来そうです。更にプレファレンスでは色々に設定を変える事も出来ます。mp3やCDは16bit 44.1khzという規格ですが24bit192khzという高規格にまでアップコンバートも出来ます。ただこうして色々な設定を尖らせれば尖らせる程、音はストレートで良くなるのですが、一方で安定性を失います。
iTunesのライブラリーから選んでも別の曲が掛かったり、演奏中にレコードで言えば針飛びの様な事も起こします。後者はアップサンプリングの設定をMaximumからPower of 2に落とすと収まる事に気が付きました。更にUse max I/O buffer sizeにチェックを入れる事でアップサンプリングの設定をMaximumに戻せました。良い音の為どこまで設定を尖らせるか、安定の為どこまでの設定で我慢するか。これからあちこち実験をする所がありそうです。
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