励磁型で御覧の様に深いカーブの付いたコーン紙、細いボイスコイルとセンターコーン、戦前のスピーカーだと言われても信じてしまいます。意外に新しくて1950年前後だろうとのお話でした。歳の割りには古めかしいと言う事では、私のスピーカーも人の事を言えた義理ではありません。
パーマネント型で、ずっと浅いコーン紙と太いボイスコイルを持った近代的なユニットが既に出回っていた頃です。この後、励磁型が淘汰されてしまうのは、永久磁石を持ったスピーカーには要らない面倒でお金の掛かる電源の所為です。 贅沢な励磁型の最終進化型と言えるのかも知れません。
同じJensenの12インチ励磁型A12は有名で個体数も多いのですが、15インチの励磁型は聴いた事がありませんでした。ロックオラのジュークボックスなどに使われた様です。流通しているA12のほとんどがハモンドオルガンからはずされた物だと聞いた事があります。オルガンにくらべてジュークボックスってずっと少ないのでしょうか。
ロックオラと言うと、40年代のピーコックと言ったかな、アールデコの奴が有名です。50年代だとすればもう少しモダンで四角い奴かも知れません。人様からお金を巻き上げる為の道具ですから、個人向けのオーディオとは違ったお金を掛ける必要があったのでしょう。
A12を使っている塚原さんの次期スピーカーの試聴に呼んでもらいました。御覧の通り裸で鳴らした訳ですから、下はすっぱり切れて出ていないはずです。38センチシングルコーンですから、上が伸びていると言っても限りがあります。上も下も出ていないナロウレンジと言うと、中域の張ったかまぼこ型が予想されます。けれどどこかが強調されたり偏ったりと言う事もない様です。狭いレンジの中ですが、バランスがとても良い.不思議なことですが、コントラバスのザンザンと言う響きやバスドラ、ベースラインも良く分かります。倍音って奴でしょうか。これを聴いてしまうと、家のオイロダインが不必要にワイドレンジで重い低音に思えます。今まで、低音の速さと軽さでは、他所のスピーカーに負けたと思った事がありませんでした。やはり、フィールド型の方がパーマネント型より偉いのでしょうか。
帰って来てから資料を調べたら、パーマネントのトリプレックスG600とフレームは同じみたいです。ナロウレンジなのに偏りが無い、今時の2way3wayに比べてナロウレンジと呼んだ訳ですが、38センチのフルレンジとすれば驚異的なワイドレンジと呼ぶべきなのかも知れません。刺激的な音も出さない、穏やかなのに分解能はとても良い。何より低音が軽い。実際に使う時にはバッフルに付ければ低域はずっと伸びるし、既に指定組合わせのツイーター103も用意出来ているそうです。結構な物を聴かせてもらいました。塚原さん有り難うございました。私の聴き間違いでなければF15Lという名前だそうです。
励磁型について
フェライトやアルニコ、更にネオジウムといった高性能な磁石が安定供給される現在では、ほとんどのスピーカーがそうした永久磁石の作る磁界の中にコイルを置いて、音声信号をコイルに通す事で磁界の中のコイルを動かします。そうした永久磁石(パーマネント型)が得られなかった昔は、強い磁界を作るのに、動くボイスコイルの外側に電磁石を作るためのコイルとそのコイルを磁化する為の電源が必要でした。スピーカーを鳴らすのは随分と大掛かりな事でした。手間とお金の掛かる電磁石が淘汰されたのは当然ですが、こうした励磁型(フィールド型)の音が悪かった訳ではありません。手間とお金を掛けても更に良い音を捜す人達に再評価されつつあります。ちなみに私のオイロダインは比較的新しいパーマネント型ですが、更に古いフィールド型の方が評価が高く、お値段も良いみたいです。