オール電化にはメリットがあります。
炎の出ないIHヒーターは安全だし、室内に無駄な熱も出しません。
プロの厨房では空調の負荷を減らせます。
私が使ってみて驚いたのは、お湯の沸く早さと鍋の外側を洗わなくて済むこと、使わない時には平なガラストップが便利な事です。家の中だけの都合で言えば良い事も多いと思います。
けれど発電所から送電線のロス、社会全体で払うコストは決して小さくありません。便利でハンドリングの良い電気にはガスのレンジに比べて大きな代償が支払われています。
深夜電力に依る給湯は一軒の家単位で考えても明らかに割高です。ヒートポンプによる給湯は大分性能が良くなったようですが、高いイニシャルコストを少し下がったランニングコストで取り戻すのには何十年も故障しない事が必要です。
電気でしか出来ない事にのみ電気を使い、他の色々なエネルギーと組み合わせて使う事が望ましい。電気ひとつに頼る仕組みは心配です。
住宅の単位で考えれば、まず箱の性能(断熱や風通し)を上げて空調の負荷を減らす事。給湯・暖房・調理は電気以外のエネルギーを選んだ方が社会全体で払うコストを減らせます。
同じ電気でも、危険の高い大規模発電所を遠くに作って送電線を長くするより、それぞれの街角に小さなガス発電所を作る事で大きな送電ロスを減らせます。大きな電力会社が要らなくなる事が一番の問題かも知れません。長い下水網と大規模な処理施設の組み合わせと、個々の家の浄化槽と言った対比にも似ています。どちらが良いかは色々な条件で変ります。食品の輸送距離を減らすのと同じ様に処理前の汚水を処理施設まで長く引き回すことを止める手もあるでしょう。
電気は使いやすくて便利です。必要不可欠です。大いに自慢して頂いて結構です。けれど、オール電化がエコだ。それどころか原子力発電までがエコだなんてのはどうなんでしょう。大嘘がまかり通る状況に危機感を感じていました。(何故、半分だけ片仮名なんだ、どうして’全電化’じゃないんだろう)
なんて思っていた所に非電化工房見学のお誘い、何も出来ない私一人にも何かのきっかけが出来ないかと期待してしまいました。
こうした単純な憤りの危うさに気付きました。お話を伺って、一方的な何かに取り込まれる事への細心の注意や、性急な何かに辟易している様子を感じました。
非電化掃除機というのもあるのですが、実物にはお目に掛かれなかったのでどういう仕組みかわかりません。これはその存在そのものがパロディになっています。こんなものよりホーキを使った方がずっと能率が良いと御本人が言ってました。物を造る事も大切ですが、それを使って社会とどう付き合うか、それが難しい。随分と苦労と訓練を積んでいらっしゃるのかも知れません。二枚腰三枚腰で行く覚悟が必要だと言われた様な気がします。
出来る事からそれぞれのスタンスで始めるより仕方無いのでしょう。
私が何かの役に立つとも思えませんが、かと言って諦める事無く廻りを良く見回して行きたいと思いました。
(真空管のマルチアンプなんて馬鹿な事をやっている人間の台詞では無いのかも知れません。)
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